小説・シナリオ学科 卒業文集制作開始!
2018年8月7日 | 学生発信委員会
はい、どうも~!
スマホに変えて早半年……いまだに『ガラケー』という愛称を捨てきれないTです。
なかなか区切りがつけられないことってありますよね?
今回はですね、『卒業文集』について!
小説・シナリオ学科では、毎年2年生たちが、夏休み中に書いた短編小説を冊子としてまとめるのですが、それを卒業文集としています。
ですが、あろうことか、Tは話し合いの日、体調不良で授業を休んでしまい、会議に参加していないんですよ……。
事前に、「卒業文集についての話し合いをするよー」というお話があったのですが、翌日、翌々日と、誰も話し合いの結果を教えてくれませんでした。
まあ、T自身、会議のこと自体を忘れてたからいいんですけどね。ナントイウコトデショウ!
記憶を取り戻した(自称)話術の匠Tは、クラスメイトに卒業文集について尋ねたのです。
ちゃんと今回の文集についてのアレコレを教えてもらえました。ヨカッタ!
ほら、今も、Tの横でブログ編集のクラスメイトが「俺ら友達だろ? 早く書き終えなよ(笑顔)」と言ってくれています。
……やはり持つべきものは、友人と、スケジュールに見合った適切な仕事量ですね!
A君「先輩たちを参考にして、今年の卒業文集のテーマ考えようぜ!」
B君「ゴリラ」
A君「突然ゴリラゴリラ言い出されても……。テーマがゴリラって何さ?」
C君「もしかしたらブログで掲載するかもよ? この話し合い。そんな変なテーマでいいの?」
B君「ゴリラゴリラゴリラー!!!」
皆、スルー。
B君「今日もゴリラキャラはスルーされるんだな……」
C君「いつもゴリラゴリラ言ってるからだよ」
なんだかんだクラスメイトが突っ込んでくれる教室の雰囲気。
そこからリレー小説はどうか? という案が飛び出しました。
A君「でも、今の会話でもボケを拾えてないのに、リレー小説なんて大丈夫かな?」
C君「じゃあさ。お互いの意見を取り込みつつ、シェアワールドをやらない?」
「いいね!」×(クラス全員-T)
ちなみにシェアワールドとは、複数の著者が同一の世界観を共有することです。
お互いの作品の良さを知っているからこそ、刺激を与えあえるであろうシェアワールドという意見。
そんな考え方にいいねが集まり、すんなり決まっていったとか。
※人づてなので、尾ひれがついている可能性有※
約三十人でひとつの世界観を共有するというのも大変なので、ここでいくつかのグループに分かれようという話になったそう。
物語の舞台となる場所を絞った『日常もの』。
『ファンタジー』では巨大生物を登場させ、妄想を詰め込み。
戦国、江戸、明治と幅広い時代を股にかける『時代もの』。
『SF』にはガジェットに恋をしているような面々が集まりました。
こうして今年は四つの世界観が出来上がり!
(ゴリラを中心に据えた世界観は惜しくも設定されませんでしたが、情報共有用SNSのアイコンはゴリラになっているとのリークが!)
今のクラスメイト達でシェアできる学院生活も、残り約半年……
当たり前となりつつある『日常』にも、おわりがあります。
夢を夢のまま、『幻想』でおわらせたくない! そんな思いで集った皆。
二年間の学院生活は確実に、全員の『歴史』の一ページとなっているはず!
『未来』、この卒業文集を振り返る時には、どんな自分になっているのか……
一つの区切りとしてお互いの成長を確かめ合う位置づけの今企画。
そう思うとより執筆に力が入りますね。
今回作成した卒業文集は、来年の4月以降に小説・シナリオ学科の体験講義に参加してくださった方に配布予定!
はい……というわけで、今回は『卒業文集』についてでした。
いいね、その他シェアもよろしければお願いします!
ここでは特別に、卒業文集から一作品、シェアしたいと思います!
【大正ロマンス】
汽笛の音が駅全体に響き渡る。
茂は人込みをかき分けながら、特徴的な大きな赤いリボンを付けた少女に向かって進んでいく。
「やっと見つけましたよ。晶子お嬢様」
振り返った時に見えた少女の不安げな顔。その表情が茂の姿を確認した瞬間に、ぱっと華やいだ。
「来てくれたんですね。茂さん」
晶子の足元に置かれている大きな茶色の鞄を視界に入れつつ、茂は言う。
「なんでこんなことをしたんですか? 心配したんですよ」
晶子が朝に家出をしてからかなりの時間が経っており、すでに今は日が暮れかけている。
夕日に照らされた彼女の姿は、こんな時だというのに、絵画のように美しかった。
「ご、ごめんなさい」
瞳に涙を浮かべながら手を震わせて、晶子は鈴の音のような声で謝った。
「でも、ここで待っていれば、絶対にあなたが迎えに来てくれるって信じていました」
「質問に答えてください」
茂は心を鬼にする。自分の必死さを、晶子に伝えたかった。
晶子は両手を重ねて、申し訳なさそうに視線をさげる。
「実は昨日、お父様から縁談のお話をされたのです」
「まさか、それが嫌でこんなことを……?」
晶子は小さくうなずく。
「自分でも馬鹿だと思います。両親を心配させて、あなたを心配させて、どうしようもないですよね。
……でも、自分の中にどうしても抑えられない強い想いがあって、それを無視してしまっては私が私でなくなってしまう。
そんな風に思ったから、だからここにいるんです」
その瞬間、茂は確信してしまった。目の前の少女の想いを。
そして、晶子は決意に満ちた強い視線を茂に向けて、「もし私がこのまま汽車に乗っていくと言ったら、あなたは付いてきてくれますか?」頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
もし、自分に少女を幸せにするだけの力があったなら、今すぐ彼女の手をとり駆けだすことができたなら、どれほどよかっただろう。
だけど、それをするわけにはいかない。
茂は晶子を想っていて、幸せになって欲しいと願っているから、だからこそ引き留める役に徹さなければならない。
「僕は、あなたに付いていくことはできません。そして、このままあなたを汽車に乗せるつもりもありません」
胸の中からどす黒いものが溢れてくる。それを無理やり抑え込んで、茂は冷たく否定する。
「さぁ、帰りましょう。旦那様たちがお待ちして――」
「私は!」
遮るようにして、晶子の大声が響く。
周囲の人たちが何事かと、彼女の方を見る。
「私は、好きでもない人と一緒になるつもりなどありません! 私は、あなたと結婚したいんです!」
「俺だって! できることならあなたの隣にいたい! だけど無理なんです! こんな俺じゃあ、あなたを不幸にさせるだけだ……」
「あなたのそばにいて、私が不幸になったことなんて、ただの一度もありません。
あなたはいつだって私のことを一番に考えてくれて、私もそんなあなたにふさわしい女性になりたいと、いつも思っていたんです!」
「……っ!」
言葉に詰まった茂は、何も言えなくなる。
そんな時、騒ぎを聞きつけたのだろう。晶子のお付きのメイドである緑が現れた。
「これを……旦那様からお預かりいたしました」
緑が晶子に渡したのは、風呂敷に包まれた小包だった。
中には、お金の入った茶封筒と、糸切りばさみがあった。
「旦那さまからの伝言です。『お前とは縁を切る。好きに生きるがいい』と」
晶子はその言葉を聞いて、涙を流した。
そして、あろうことか汽車に乗ってしまう。
「お嬢様!?」
慌てる茂の横から、緑はさらに「あなたへの伝言もあります」と告げる。
「『晶子を守れ』だそうです」
最後にほんのわずかな笑みを見せて、緑はそそくさと立ち去ってしまった。
「茂さん!」
力のこもった真っすぐな晶子の声が、茂の鼓膜を貫く。
「私はこのまま汽車に乗ります!
でも、私は一人ではありません。あなたが必ずそばにいてくれると信じてますから!そうでしょう!?」
茂は拳を握りしめる。
そして一歩、新たな世界に向かって飛び出した。 (完)
以上が現2年生の作品となります。見てくださりありがとうございました。
他学科も卒業制作に取り組み始めていると聞きます。
他学科の友人に影響を受けて、動画を編集しだした経緯もTにはあるので、
もっと色々なことを他学科からも吸収し、
自分が描ける世界観を広げていきたいと思います!
学院の学生だからこその他学科との関わり合いも、大事にしていきたいですね。
ありがとうございました!