声優を目指す方なら、「ミックスボイス」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
声優の必須テクニックではないものの、習得しておくことで大きなアドバンテージになります。人気声優として多方面での活躍を目指すなら、ぜひ身につけておきたいテクニックです。
今回のコラムでは声優志望者向けに、ミックスボイスの概要と習得するメリット、出し方などを解説します。
目次
ミックスボイスとは
ミックスボイスは、地声(チェストボイス)と裏声(ファルセット)の中間に位置する声質で発声することです。地声のようにしっかりした声で、裏声のような高音域を出すことを指します。「ミドルボイス」と呼ばれることもあります。
ミックスボイスはいくつもある声質の種類の中で、特に習得が難しく、それでいてプロの歌手必須のテクニックと言われるほどに重要です。
声優にとって、身につけておいて損はないテクニックと言えます。
なお、ミックスボイス以外の声質の種類には、他に次のようなものがあります。
チェストボイス
チェストボイスは地声のことで、普段話をする時の声に近い声質です。
ただし、厳密には地声と異なり、チェストボイスの場合は声をしっかりと胸に響かせることが必要になります。
また、喉を開く、声帯を閉じるなども意識しなければならず、練習なしで自然に出すのは困難です。
ヘッドボイス
ヘッドボイスは、声を頭で響かせる声質で「頭声(とうせい)」とも呼ばれます。
吐いた息のほとんどが声になるという特徴があり、高音で歌う時でも力強い歌声を出せます。
また、キレイに声が響くので、やわらかい高音で歌えるのもヘッドボイスならでは。
オペラやクラシックでの発声法として、よく取り入れられています。
ちなみに、ヘッドボイスをマスターすることでミックスボイスを習得すると言われているので、ミックスボイスを習得したい時は、まずヘッドボイスの練習をしてみるといいかもしれません。
ファルセット
ファルセットは裏声のことで、通常よりも高い声質です。
ヘッドボイスに似ていますが、ヘッドボイスよりも柔らかく、優しい響きになります。
また、ファルセットのほうがヘッドボイスよりも息の量が多く、声に透明感が生まれるという違いもあります。
ファルセットを含む裏声の出し方については、下記のコラムも参考にしてください。
裏声の出し方とは?綺麗に出せるコツや簡単なトレーニング法を解説
ホイッスルボイス
ホイッスルボイスは、ファルセットよりもさらに高い声質のことで、人が出せるもっとも高い声を指します。
「超ハイトーンボイス」「超高音発声」とも呼ばれ、時には「奇声に近い」と表現されることも。
一見すると音楽とは関係がなさそうに聞こえますが、ホイッスルボイスを習得することで歌にインパクトを与えられ、聴く人を魅了できます。
上級者向けのテクニックではありますが、ここぞという時に取り入れることで、効果を発揮する発声法と言えるでしょう。
エッジボイス
エッジボイスは、声帯を閉じた状態で発声した時の声質です。
低音、かつ細かく振動しているような声で、イメージとしては、ホラー映画で流れるような「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」といった音に似ています。
実際に映画「呪怨」では、このエッジボイスが使われました。
喉に負担がかからないことから、発声法としてだけではなく、声帯を閉じるための練習にも使われます。
ミックスボイスのイメージ
ミックスボイスについて、大まかな定義や他の声質との違いを掴めたでしょうか?
何となく分かったという方もいれば、中にはまだイメージしづらいと感じている方もいるかもしれません。
ミックスボイスは、よく“電話に出る時の声のイメージ”と言われます。
電話で話す時は声が通りにくいので、意識して高い声を出しますよね?
その時の声が、ミックスボイスによく似ています。
ミックスボイスのイメージを掴むためには、実際に聴いてみるのも効果的です。
参考までに、ミックスボイスで歌う歌手・アーティストを数名、挙げてみました。
いまいちミックスボイスのイメージが掴めない方は、歌を聴いてみてください。
ミックスボイスで歌う男性歌手・アーティスト
- 秦基博さん
- 草野マサムネさん(スピッツ)
- 藤原聡さん(official髭男dism)
- hydeさん(L’Arc〜en〜Ciel)
- ナオト・インティライミさん
ミックスボイスで歌う女性歌手・アーティスト
ミックスボイスの感覚
ミックスボイスは、何となくイメージできても「実際に発声した時の感覚が分かりにくい」と感じる方が多いようです。
ミックスボイスに成功すると、次の2つが混ざったような感覚があります。
①口の中で声が響いている感覚
②口の奥から頭の上へ声が突き抜けていく感覚
多少の個人差はあるものの、以上のような感覚がない場合は、ミックスボイスではなく地声で発声していると考えて良いでしょう。
比較的独特な感覚なので、初めて成功した時はきっと「これだ!」と分かるはず。これからミックスボイスの練習をする方は、感覚の違いを意識してみてください。
もちろん、感覚を知っているだけではミックスボイスを出せないので、本記事を参考にして、しっかり練習してくださいね。
声優志望者がミックスボイスを習得するメリット
プロの歌手必須のテクニックと言われるミックスボイスですが、声優志望者にも習得が勧められています。
なぜなら、声優志望者がミックスボイスを習得すると、次のようなメリットがあるからです。
幅広い表現ができるようになる
ミックスボイスを習得すると、地声のまま高いトーンの裏声を出せるようになるので、演技をする時の表現の幅が広がります。
また、ミックスボイスには地声に近い「硬い響き」と、裏声に近い「柔らかい響き」があります。
硬い響きと柔らかい響き、片方だけではなくどちらも自在に使い分けられるようになれば、これも表現の幅が広がることに繋がるでしょう。
キャラクターソングなどを歌いやすくなる
声をあてるキャラクターによっては、演技の中で歌を歌うことがあります。特にキャラクターソングなどは、約3分〜5分の曲を1曲歌うので、実質歌手のような仕事に近いです。
こうした歌を歌う役や、キャラクターソングを歌う仕事を請け負った時、ミックスボイスを習得していれば歌手さながらの美しい高音で歌えるでしょう。
歌の上手さはキャラクターの個性に合わせて、敢えて拙く歌うケースもないとは言えませんが、それでもミックスボイスのテクニックを持っていれば、歌手などの仕事に就く歌の上手なキャラクターの役を任される可能性が考えられるので、習得しておいて損はありません。
また、演技で歌を歌う時に、喉を痛めにくくなるというメリットもあります。
ミックスボイスは誰でも出せる?
ミックスボイスは出すのにコツがいる声なので、「限られた人にしか出せないのではないか?」と思い込んでいる方が多いようです。
確かに人によって出しやすい・出しにくいはありますが、コツさえ掴めれば基本的には誰でもミックスボイスを出せるようになります。
もしあなたがミックスボイスを出せず悩んでいる場合、それは“出せない人”なのではなくコツが掴めていないだけです。
この記事ではミックスボイスの出し方や練習方法を解説しているので、ぜひ参考にしてミックスボイスを習得してくださいね。
ミックスボイスの練習方法のステップ
では、どうすればミックスボイスを出せるようになるのでしょうか?
ミックスボイスを出すには、様々なことを意識する必要があります。
慣れれば自然とできるようになりますが、最初の頃はゆっくりと順序立てて、発声してみてください。
ここからはミックスボイスの練習方法(出し方)について、ステップごとにどんな意識を身につけていけば良いのか解説していきます。
自宅で気軽にできる練習なので、ぜひチャレンジしてみてください。
マンションなどの集合住宅に住んでいて、声を出すことに不安がある方は、カラオケのような防音環境の整った施設を利用するのがおすすめです。
①体の力を抜く
まず大事になるのは、リラックスした状態で始めることです。
ミックスボイスは、体に力が入っていると思うように出せません。
体を動かしたり、水を飲んだりして体の緊張をほぐしてください。
②腹式呼吸をする
腹式呼吸とは、息を吸ってお腹が膨らむような呼吸の方法で、横隔膜を使います。
腹式呼吸の仕方は次の通りです。
①お腹に手をあて、凹ませるように息を吐く
②鼻から息を吸う
③口で息を吐く
この感覚を掴んだら、次のステップに進みましょう。
③喉を開いて歌う
ここでは、喉を大きく開いたまま歌う練習をします。
喉を開くとは、よくあくびをした時の状態に例えられます。
喉の奥が見えるほど、大きく口が開いている状態のことです。
鏡を見ながら喉を開き、そのまま歌ってみてください。
④声帯を閉じる
喉を開く感覚が掴めたら、今度は声帯を閉じます。
声帯は声を出すための器官で、喉の奥にあります。
息を吸った後、その息を吐き出しながら、喉の奥で一瞬息を止めると、声帯を閉じる感覚を掴みやすいです。
⑤地声から裏声に変わるポイントを探る
喉を開く感覚、声帯を閉じる感覚が掴めた後は、地声から裏声に変わるポイントを探します。
やり方は簡単で、地声から少しずつトーンを高くしながら、「あー」と声を発していきます。
この時、トーンが変わってキツイと感じた部分が、地声から裏声に変わるポイントです。
⑥喉に力を入れず裏声を出す
5で自分にとって裏声になるトーンが分かりました。
次は5で判明した裏声を、喉に力を入れないようにして出します。
この時、3で掴んだ喉を開いた状態をキープすることが大切です。
⑦鼻腔共鳴させる
鼻腔共鳴とは、鼻の奥(鼻腔)を使って声を共鳴させる、つまり響かせることです。
口を閉じたまま声を出すことをハミングと言い、このハミングで出た声を、そのまま口から出すイメージで地声を出します。
鼻腔の奥が響く感覚が分かれば、それが鼻腔共鳴です。
これまで身につけた腹式呼吸なども踏まえて歌う時に反映させると、ミックスボイスを出すことができます。
ミックスボイスのポイントと苦手を克服する練習方法
ミックスボイスを出す時は、以下の4つのポイントを押さえる必要があります。
- 声帯を閉じる
- 喉を開く
- 裏声を出す
- 鼻腔共鳴で響かせる
どれが欠けてもミックスボイスは出ないので、苦手な部分がある場合は集中的に練習しましょう。
以下では、ポイントごとの練習法を詳しく紹介していきます。
声帯を閉じるのが苦手な場合の練習法
声帯を閉じるのが苦手な方は、まずエッジボイスを出せるように練習しましょう。
エッジボイスは声帯を閉じた状態で発声する声なので、エッジボイスをマスターできれば、自然と声帯も閉じられるようになります。
まずは喉に適度に力を入れた状態で、息が続く限り息を吐き続けましょう。
この時、喉に力を入れすぎず、リラックスした状態はキープするように心がけてください。
一定の音量で息を吐き続ける最中に、今度は一瞬、声を止めます。
この声を止めた時の状態で声を出すと、「あ゛」のようなエッジボイスの音が出ます。
目的はミックスボイスをマスターすることなので、エッジボイスを出せるようになったら、声帯を閉じる感覚がどんなものか、忘れないようにしてくださいね。
喉を開くのが苦手な場合の練習法
喉を開くのが苦手な方は、舌の形を意識してみてください。
喉は、単に舌を下げるだけでは開けません。
舌を平らにして、喉や口の中の空間を広く確保することが大切です。
また、鼻から息を吸うことで、喉が開く感覚を掴みやすいと言われています。
舌を平らにして口を開けた状態で、鼻から息を吸ってみてください。
この時、喉仏が下がるようであれば、正しく喉が開けています。
分からない方は喉仏を触って、動きを確認しましょう。
もう1つ、喉を開く時は下顎ではなく、上顎を使うよう意識することも大切です。
下顎を中心に使うと滑舌が悪くなり、せっかく喉を開けてもミックスボイスが台無しになってしまいます。
顔は正面を向いたまま、上顎を動かして喉を開くように心がけましょう。
裏声を出すのが苦手な場合の練習法
裏声を出すのが苦手な方は、まず喉に余計な力が入っていないか、確認してみましょう。
余計な力が入っているようであれば、ストレッチや発声練習をして、喉の緊張をほぐしてください。
裏声を出すには、腹式呼吸もポイントになります。
お腹を凹ませるようにして息を吐きながらしっかりと声を出すと、安定した裏声を出せます。
また、ありがちなのは自分では出せないような高すぎる音を、無理やり出そうとしてしまうパターンです。
出せる音域は人それぞれ違うので、裏声だからといって限界以上に高い声を出す必要はありません。
「音が高すぎるかな?」と感じたら、鍵盤の音に合わせて裏声を出してみましょう。
この時、低い音から順に出すことで、いずれ自分の限界の音域が分かるはずです。
裏声の出し方については、下記のコラムも併せて参考にしてください。
裏声の出し方とは?綺麗に出せるコツや簡単なトレーニング法を解説
鼻腔共鳴で響かせるのが苦手な場合の練習法
鼻腔共鳴が苦手な方もまた喉に力が入っている可能性が考えられます。
喉に力が入っていると鼻腔に音が響かないため、まずは喉をリラックスさせるようにしましょう。
喉がリラックスした状態でも鼻腔共鳴できない場合は、息の量が多すぎる、または強すぎることが原因として考えられます。
無理に響かせるのではなく、最初は少し少なめの息の量でハミングを使った練習をしてみてください。
そのまま徐々に息の量を増やしていくと、声が響く息の量が把握できるはずです。
ミックスボイスが出せない原因と対策
上でご紹介したステップに沿っても、ミックスボイスが出せない場合、次のような原因が考えられます。対策と一緒にまとめましたので、参考にしてください。
体に力が入っている
最初の頃は、何とかしてミックスボイスを出そうと意気込み、体に力が入ってしまいがちです。しかし、体が強張っていると喉にも力が入ってしまい、絞り出すような高音になってしまいます。
とてもミックスボイスとは言えないので、必ずリラックスした状態で取り組むようにしてください。
体に力が入ってしまう方は、一度大きく深呼吸をしてみましょう。その後、下半身で全身を支えて、上半身を完全に脱力させるイメージで姿勢を整えると、自然と体の力が抜けます。
他には、部屋の中でアロマを焚いてみるなど、自分がリラックスできる方法を探して実践してみてください。
腹式呼吸ができていない
腹式呼吸は、歌を歌う時の基本のテクニックです。腹式呼吸ができていなければ、ミックスボイスも出せません。必ず腹式呼吸を身につけてから、先のステップへ進みましょう。
腹式呼吸が苦手な方は練習の際に、息を吸う時間よりも吐く時間を長くするよう心がけてみてください。息を吐く時間を長くすることで、副交感神経が優位になり、リラックス効果を得られます。
表情筋や声帯閉鎖筋が鍛えられていない
ミックスボイスは、喉が開いた状態かつ声帯が閉じた状態で高音を出すテクニックです。
表情筋や声帯閉鎖筋(声量や音程を調整する筋肉)が鍛えられていないと、思い通りに喉を開いたり、声帯を閉じたりできないため、ミックスボイスを出しづらくなります。
以下のトレーニングで、表情筋や声帯閉鎖筋を鍛えてみてください。今日は難しくても数日後、数週間後にはミックスボイスが出せるようになるかもしれません。
表情筋トレーニング
割っていない割り箸を2本用意して、持ち手側を両の奥歯で「ハ」の字を描くように咥えてください。その状態のまま「らたなかさ」と発音することで、表情筋が鍛えられます。
声帯閉鎖筋トレーニング
声帯閉鎖筋を鍛えるなら、エッジボイスの練習をするのがおすすめです。
エッジボイスとは「あ」に濁点がついたような音を出し続ける発声方法で、「ホラー映画に使われる声」などと例えられます。
具体的には、喉に適度な力を入れて低く小さな声を、息が続く限り発し続けてください。
エッジボイスは声帯を程よく閉じたまま声を発するので、続けることで声帯閉鎖筋が鍛えられます。
ミックスボイスを独学で身につけるのは難しい?
感覚や出し方、コツさえ分かれば、ミックスボイスは独学で習得できます。しかし簡単ではないので、中にはどれだけ練習を重ねても、なかなか身につかない方がいます。
上達のスピードには個人差がありますから、焦らず練習を続ければ、いつか習得できるでしょう。しかし、「将来はミックスボイスを出せる声優になりたい!」と明確な目標を持っている方にとっては、あまり時間をかけていられないことも事実です。
独学でミックスボイスが身につかない、少しでも早く習得したいという方は、プロのボイストレーナーや講師のレッスンを受けるのがおすすめです。プロにチェックしてもらうことでミックスボイスを出せない原因が明確になり、改善策のアドバイスももらえます。
ボイストレーニングスクールではなく、声優養成のスクールでミックスボイスのテクニックの練習ができる場合もあります。声優養成のスクールなら、ミックスボイス以外にも声優に大事な知識や技術が身につくので、「声優になる」という夢にもより近づけます。
まとめ
今回はミックスボイスの概要や感覚、声優志望者が習得するメリット、ミックスボイスの練習方法などを解説しました。
ミックスボイスが出せれば、将来、声優としての仕事の幅が広がります。
歌に深い関わりを持つ作品やキャラクターのオーディションを受ける時に、大きなアドバンテージになるので、習得しておくことをおすすめします。
ただし、1人でミックスボイスのテクニックを身につけるには時間がかかりますので、本気で声優を目指すなら声優養成のスクールに通うのがベストです。
アミューズメントメディア総合学院(AMG)の声優学科は、未経験から2年でプロの声優を目指せるスクールです。過去には柿原徹也さんや羽多野渉さん、小林裕介さんのように、有名な声優を多数輩出しています。
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