「裏声の正しい出し方が分からない…」「裏声を出そうとすると、声がかすれてしまう…」といった悩みを抱えていませんか。
多くの人は、地声では出せない音域の音を出そうとしたとき、無意識に裏声に切り替わります。
しかし、会話をするときの声が元々、裏声に近い声質の人や、地声と裏声の境界が分かりにくく、地声と歌声の区別がしにくい声質の人も存在するので、判断が難しいケースも。
この記事では、裏声の基礎知識から、裏声の出し方のコツ、裏声が出せない原因などについて解説します。
地声と裏声の違いとは?
そもそも地声と裏声の違いをご存知でしょうか。裏声をマスターするためには、まず地声と裏声それぞれの特徴を知っておく必要があります。
まずは、声が出る仕組みを理解しましょう。喉にある声帯が振動することによって、声が音になります。
声帯は、楕円型の2枚のひだが向かい合った形になっており、呼吸するときには開き、発声するときには閉じた状態に。地声を出すときと裏声を出すときでは、この声帯の動きが異なります。
地声とは?
地声とは、簡単に説明すると、普段話しているときに自然に出している声のことです。地声を出しているときは、声帯と声帯の粘膜部分が共に振動しています。
主に声帯を閉じる筋肉が働くことによって、声帯がしっかりと閉じるため、声帯そのものも短く分厚くなります。そのため、地声は比較的低音で強く、太い声色になるのが特徴です。
裏声とは?
地声を出すときには声帯を閉じる筋肉が働きますが、裏声を出すときは、主に声帯を引き伸ばす筋肉が働きます。
声帯の筋肉はやや硬くなり振動しなくなりますが、声帯の粘膜部分は振動した状態で発声しているのが裏声です。裏声は地声に比べると息の量が多く、柔らかい音になります。
裏声と地声ははっきりと分けられないことも多く、「地声成分が強い裏声」といった表現をすることも。
そのため、一口に裏声と言っても様々な種類が存在します。ここでは、裏声をさらに3つの種類に分けた「ファルセット」「ヘッドボイス」「ミックスボイス」について詳しく説明します。
ファルセット
ファルセットとは最も一般的な裏声で、裏声と聞いて真っ先にイメージしやすい声でしょう。
ファルセットは、裏声の中でも透明感があって繊細な裏声なので、感情的な表現がしやすいのが特徴です。
ただし、地声と比べて吐き出す息の量を多くする必要があるので、呼吸が浅いと上手く発声できません。
ファルセットをマスターすれば、これからご紹介するヘッドボイスやミックスボイスのコツも掴みやすくなります。
ヘッドボイス
ヘッドボイスはヘッドという名の通り、頭のてっぺんから声を出すようなイメージで発声する裏声です。
息の量が多いファルセットと比べると、ヘッドボイスは息漏れが少なく、芯のある裏声になります。そのため、裏声でありながら、かなり力強くてパワフルな発声が可能です。
オペラ歌手が高音域を歌うときには、ヘッドボイスで発声していることが多いです。
ファルセットでは表現できない、または声量が足りないという問題がある部分でも、ヘッドボイスを使うことで、はっきりとした裏声を安定して出せるようになります。
ミックスボイス
ミックスボイスとは、裏声と地声が混ざった発声方法です。ミックスボイスで発声することで、地声と裏声の境目が目立たなくなり、なめらかになります。
ミックスボイスはかなり高度なテクニックで、歌が得意な人でもミックスボイスは苦手である場合も少なくありません。
しかしその分、ミックスボイスを上手に使いこなすことができるようになれば、歌の表現が豊かになり、歌える曲の幅も広がるでしょう。
裏声の出し方コツ
地声と裏声の違いや、裏声の種類について理解できたところで、裏声の出し方コツについて解説します。
今回ご紹介する方法を全て実践するのは大変かもしれませんが、効果的な練習方法もご紹介しているので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
1.身体をリラックスさせるためのストレッチを行う
具体的な裏声の出し方を練習する前に、身体の緊張をほどいて裏声を出しやすくすることが重要です。身体全体をリラックスさせるためのストレッチを行いましょう。
- まずは肩甲骨をほぐしましょう。クロールで泳ぐイメージで、手をゆっくり大きく前方向に回します。
- 次は大胸筋を広げます。背泳ぎをするイメージで、ゆっくり大きく手を後ろ方向に回します
- 首を軽く右斜め前、左斜め前に倒した後に、ゆっくり大きく左右に1周ずつ回してほぐします。
- 脚を肩幅に開き、上半身の力を抜いて、床に向かって前屈します。肩甲骨の真ん中に息を入れるイメージでリラックスさせます。
ゆっくり大きく呼吸をしながら行いましょう。従半身を軽く揺らしたときに、腕が人形のようにぶらぶらしたら、力が抜けてリラックスできている証拠です。
余裕があれば、鼻歌(ハミング)やリップロールをしながらストレッチをするとより効果が高まります。
2.呼吸(ブレス)の練習をする
裏声を上手に出すには、呼吸(ブレス)がリラックスした状態でできているかということも大事です。
身体がリラックスしていないと、呼吸が浅くなり、息を十分に吸ったり吐いたりすることができません。
裏声をマスターするために、以下の呼吸(ブレス)のトレーニングを行いましょう。
- 口を軽く開いて、鼻と口の両方から息を吸います。鼻から70%、口から30%の感覚で身体の後ろの方に息を送るイメージをしましょう。
- 息を腰、背中、肩甲骨、肩、首、顔、目に順番に入れていくイメージで吸います。
- 息を吐きます。口を縦に開いて「ハッ」と一息で吐き切ってください。
- これをゆっくりと6回行いましょう。
コツは、腰から息を入れていき、段々と身体を開きながら、徐々に身体の上の方にも息を入れるという感覚で息を吸うことです。
3.声帯の筋トレをする
声帯は筋肉なので、筋力トレーニングをして鍛えることで、声をコントロールしやすくなります。以下の筋トレを行なって、裏声を綺麗に出すための筋力を鍛えましょう。
- 指定した周波数の音を鳴らせる機械やスマホアプリを用意します。女性はB4(hiB)493.883Hz、男性はE4(mid2E)329.628Hzに合わせて音を鳴らしましょう。
- 身体をリラックスさせて息を大きく吸ったら、あくびをするときのように喉を開き、鳴っている音に合わせて「ふわー」とロングトーンで発声します。
- 声が綺麗に出せたら、音を半音ずつ上げていきましょう。
このトレーニングを段階的に行うことによって声帯が鍛えられ、裏声が綺麗にと出せるようになるはずです。身体をリラックスさせて、喉に余計な力が入らないように意識してみてください。
4.鼻歌(ハミング)で歌う
裏声の練習で一番手軽な方法と挙げられるのは、鼻歌(ハミング)で歌うことです。地声から裏声への切り替えがうまくできない人でも、鼻歌(ハミング)に置き換えることで綺麗な裏声が出せることも。
口を閉じた状態で鼻歌(ハミング)で発声をすると、声が鼻に響き、抜けやすくなるので、
鼻歌(ハミング)で、高音が出にくい曲を歌ってください。
鼻歌(ハミング)でも高音が出ないのであれば、自分の声域には合っていない曲の可能性があるので、原曲のキーから半音~1音下げて、鼻歌(ハミング)を試してみましょう。
鼻歌(ハミング)で高音を出すときに、鼻の頭から眉間にかけて音が響いていることが感じられるなら、正しく声を響かせることができている証拠です。
鼻の頭から眉間に音を響かせる感覚が掴めたら、鼻歌(ハミング)の状態から口を少しずつ開き、「マ」の音で発声をしてください。「ん〜ま〜」という音になります。
この練習を行うことで、鼻歌(ハミング)の響きをそのままに発声する感覚を身につける手助けになるので、おすすめです。
5.喉を十分に開く
裏声が上手に出せない人は、喉の開き方が良くない可能性があります。
身体が緊張して余計な力が入っていると、喉も力んでしまい、喉が締まった状態で声を出してしまいます。喉が締まった状態(喉に力が入っている状態)では、裏声が綺麗に出せません。
喉を開くコツは、あくびをする真似をすること。あくびをしているときが喉を開いている状態なので、意識してあくびをするイメージをしながら口を開くと、喉も開きます。
喉を開くという感覚は、裏声はもちろん、地声で歌うときにも大事になるので、しっかりとつかんでおきましょう。
喉を開く感覚が分からない人は、まずは喉に力を入れずに「ハ」と息だけ履いてみてください。そこから徐々に声を出し、さらに音程をつけて発声していくことで、喉が開いている感覚がつかみやすくなります。
6.地声と裏声を交互に出す
ひとつの曲を歌うときに、全ての音域を地声だけ、または裏声だけで歌う人は少ないでしょう。プロの歌手も、それぞれ地声から裏声に切り替わるポイントがあり、2つの発声を使い分けていることがほとんどです。
しかし、地声から裏声にスムーズに切り替えられるようになるには練習が必要です。裏声への切り替えが苦手という人も多いのではないでしょうか。
裏声を上手に出せるようになりたいのであれば、地声と裏声を交互に出す練習をしてみましょう。
- 「ア」や「ナ」の音で、基準のC(ド)の音とその1オクターブ上のCの音を、4拍ずつ交互に伸ばします。低い音は地声、オクターブ上の音は裏声で発声してください。
- 低い音と高い音を交互に発声することに慣れてきたら、半音ずつ音を上げていきます。
地声と裏声を交互に発声することで、地声を出しているときと、裏声を出しているときの声帯の開き方の違いを、感覚的につかむことができるはずです。
この練習を繰り返すことで、声帯を上手に開いたり閉じたりすることができるようになるので、曲の中で地声から裏声に切り替えやすくなります。
裏声の出し方が習得できない原因
練習をしても裏声の出し方がなかなか習得できないという人は、声帯の使い方や発声方法に原因がある可能性が高いです。
裏声の出し方が習得できない原因を挙げるので、ぜひ参考にしてみてください。
喉に余計な力がかかっている
緊張などによって、喉に余計な力がかかっていると、裏声が上手に出せなくなってしまいます。
地声で歌うときにも、喉に力が入りすぎていると喉を酷使した発声になってしまい、喉を痛める危険があるので、喉に力が入りやすい人は気をつけましょう。
喉に力が入らないようにするためには、身体全体と口まわり、喉まわりの筋肉をリラックスさせることが大事です。歌う前には必ずストレッチや発声練習をして喉の緊張をほぐしましょう。
息を上手に吐けていない
息を上手に吐けていないことも、裏声が上手に出せない原因のひとつです。
裏声の発声は地声の発声と比べると、多く息を吐く必要があります。息のコントロールができていないと地声が不安定になり、声量も小さくなってしまいがち。
しっかりと安定した裏声を出すためには、上手に呼吸ができていなければなりません。腹式呼吸でお腹からしっかりと声を出す意識をして、声を前に飛ばす意識をしながら発声しましょう。
マイクよりも30センチほど前に声を届けるようにイメージしながら、発声をするのもおすすめです。
裏声で出そうとしている音が高すぎる
そもそも、裏声で出そうとしている音が自分の音域に合っていない高すぎる音である場合は、裏声が出しにくいのは当然です。
自分の音域がよく分からない人は、まずは鍵盤の音に合わせて低い音域から順番に裏声を出す練習をしてみてください。鍵盤の音を聞きながら発声をすることで、今の自分の限界の音域が分かります。
鍵盤で音を取りながら練習しても出なかった音が、曲中で急に出せるようになるということはあり得ません。自分の出せる音域とかけ離れた高音を無理に出そうとすると、喉に負荷がかかり痛めてしまう危険性があるので注意しましょう。
特に、裏声のコツが掴めるようになるまでは、楽に発声できる低めの音域で練習するのがおすすめです。
裏声の出し方をマスターするメリット
裏声を上手に出せるようになることで、得られるメリットはたくさんあります。みなさんもぜひ練習して裏声をマスターし、歌唱力をアップさせましょう。
幅広い表現ができるようになる
裏声の出し方をマスターするメリットは、歌の表現の幅が広がることです。
裏声は、地声にはない魅力をたくさん持っています。裏声特有の透明感や優しさ、繊細さを駆使することで、より幅広い歌唱表現が可能になります。
さらに、地声と裏声を上手く使い分けることができれば、力強さと暖かさを巧みに操ることができますよ。
高音域が広がる
地声だけで歌おうとしても、地声で出せる音には限界があります。無理やり地声で高音を出そうとすると喉を痛めるリスクが高まり、危険です。
裏声の出し方を習得することで、地声では出せない高音域を楽に出せるようになるというメリットがあります。
裏声をマスターすれば、高音域が1オクターブ以上広がることも少なくありません。今まで歌えなかった曲も、スムーズに歌えるようになるので、ぜひ裏声を練習しましょう。
ミックスボイスが習得しやすくなる
裏声の出し方を練習することで、ミックスボイスも習得しやすくなることも、メリットのひとつです。ミックスボイスとは、地声と裏声をミックスしたような力強い裏声のこと。
裏声は柔らかくて透明感がある一方で、音量が小さい傾向にありますが、ミックスボイスが使えるようになると、芯のある太い裏声が出せるようになります。
地声、裏声、ミックスボイスを使いこなせるようになれば、かなり高度な表現が可能になり、様々な声質や声色で歌えるようになります。
上級者向けのミックスボイスを習得するためには、裏声の出し方をマスターすることが必要不可欠です。
まとめ
これまで裏声と地声の違いや、ファルセット、ヘッドボイス、ミックスボイスについて、裏声の出し方のコツ、裏声が出せない原因、裏声の出し方を習得するメリットについて解説してきました。
裏声の出し方をマスターするために基本となるのは、身体をリラックスさせ、喉に無駄な力を入れない状態で発声することです。歌の発声において、力まないことが最も重要なので、意識してみてくださいね。
裏声の出し方についてより詳しく学びたいという人は、専門学校やスクールに通うのもおすすめです。
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