2005年4月28日、人形アニメーション映画監督・栗田やすお先生が来院、キャラクターデザイン学科・アニメーション学科合同で在校生に向けて特別講義が行われました。新進の人形アニメーション作家として注目を集める栗田監督の新作映画「緑玉紳士」の劇場公開にさきがけ、その一部の上映と制作秘話、そしてなんと、実際に撮影に使われた人形たちを使って人形アニメーション製作の実際をライブで見せてくれました。その貴重な様子を、写真と動画でレポートします!
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人形アニメーションは、日本ではこれから注目を集めるジャンル。そのなかにあって、栗田監督は新人として大きく注目を集めています。ほとんど一人で作り上げた「緑玉紳士」は、ちょっとおかしくて、でもスリルいっぱいのジェット・コースター・ムービー。ユニークなキャラクターたちと、次から次に繰り広げられるアクションとサスペンスに、一度見たひとは、きっと画面から目が離せないでしょう。また、ジャジーな音楽もオシャレ。そもそも人形アニメーションの上映会には、若い女性が数多くつめかけるのがここ数年のトレンドといわれています。 講義にやってきた学生たちも、皆、熱心に監督の話をきいていました。もっとも、関西人らしいサービス精神と、力いっぱいひとを楽しませるキャラクターで、製作の様子を熱く語る監督に、場内が笑いの渦に巻き込まれることもしばしば。まだ馴染みのないジャンルということもあり、人形アニメーションにも詳しいアニメーション研究家の津堅信之氏の司会進行で、楽しく、熱く、そして深くトークは進んでいきました。 |
そして、撮影に用いられた人形を使っての実演。画面狭しと動き回っていたキャラクターたちは、こんな大きさのものだったんだという驚きがあり、手で撮影機材を操作しながら、もう一方の手で人形を動かすさまに、学生たちも真剣な面持ちで見入っていました。 「作り手の身体感覚が画面に出るのが、人形アニメの特徴なんですよ」と、栗田監督は語ります。栗田監督は、人気作「ウォレスとグルミット」で知られる監督、ニック・パークの名前をあげ(栗田監督自身が多大な影響を受けた人形アニメ作家でもあります)、「ニック・パークはあまり運動が得意ではなかったみたいですね。ぼくは体育と美術はいつも一番でないとイヤなひとだったんで(笑)」と語っていました。栗田監督は、空手もやっていたことがあり、またジャッキー・チェンの映画は、監督のエンターテインメント性に大きな影響を与えています。 |
そして、質疑応答になると、やはりクリエイターの卵である学生たちから活発な質問が出されました。「キャラクターのデザインは、どんなところから発想されていますか?」「人形の素材は何ですか?」といった質問などです。 「緑玉紳士」の主人公のグリーンピースは、監督が高校のころ、ノートの落書きにすでに「いた」とのこと。敵役は、そのグリーンピースの「悪魔バージョン」という感じだそうです。また「緑玉紳士」の人形たちは、型を作り、そこにウレタンを流し込んで作られています。さらに、そこに芯になる針金を通し、自在にポーズをつけられるようにしたものです。監督は、そうした素材を扱っている業者さんを訪ね、探し出すところからはじめており、また素材に関する質問がいちばん多いそうですが、「この方法はあまりお奨めしません」とのこと。整形したウレタンの中心に芯になる針金を通すのが難しいんだそうです。そこで、これから人形アニメを志そうというひとには、東急ハンズなどで売っている「オーブンで焼くとゴムになる粘土」が手頃だと紹介されました。 そのほかにも、とても具体的な製作の苦労話もきかれ、充実したイベントとなりました。 |
さらに、「緑玉紳士」の劇場公開を記念して、携帯ストラップなど限定グッズや栗田監督の著書「緑玉紳士―Cinema book」の販売も行われました。学生たちは監督にサインをしてもらったりと交流を深めていました。 イベントに際して、栗田監督よりこれからクリエイターを目指す皆さんにメッセージをいただいています。