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イラストレーター のんさん ロングインタビュー

大人気小説「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金8」(ファミ通文庫)や「安達としまむら」(電撃文庫)などの表紙イラストを手がけている、人気イラストレーター、のんさんに筆記インタビューを敢行!
将来、クリエイターを目指す皆さんへのメッセージもいただきましたので、ぜひご覧ください。

――絵を描き始めたきっかけは何でしょうか。

絵を描き始めたのは2歳くらいからだったと思います。きっかけというか、多分他に娯楽がなかったからだと思います…(笑)
『せんせい』というおえかきボードに四六時中絵を描いて遊んでいました。

――絵の技術はどうやって習得したのでしょうか

絵の技術…が私にあるかどうかを考えると、ものすごく胸が痛いのですが、自分の場合は「数をこなした」以外にないと思います。
描くスピードだけはものすごく早いので、イラストレーターになるまでは毎日かなりの量を描いていました。

会社(アニメーターの頃)で8時間描いて、家に帰ってからも5時間くらいは趣味の落書きをしていたと思います。
個人の漫画や版権の仕事は自宅作業だったので、土日返上で描いていました。

今思うと、他に趣味とかやることないのかという感じですが…
技術の習得目的というよりも、絵を描くのが本当に楽しかったのを覚えています。
暇があるなら絵を描きたい!という感じで、全く苦になりませんでした。

逆にイラストレーターになってからは、仕事以外でほとんど絵を描かなくなりました。
絵を描くこと以外に、楽しいこと、やりたいこと、やらなきゃいけないことがどんどん増えてきたからです…
今、趣味で5時間絵を描けとか言われると、そこまでの意欲はないのでちょっとつらいです(笑)
やはり自分の場合は、数をこなさないとどんどん腕が落ちていくので、
今は技術向上どころか、これ以上下手にならないようにと、キープするのに必死です。

――アニメーションとイラストでは、描き方が変わったりしますか。

変わると思います。
アニメを描く線と、イラストを描く線は、私の中では全く別物です。

私は、アニメーションは「動いてなんぼ」だと思っているので(意図した止めのカットとかは別ですよ!)、たとえどんなに絵になるポーズやしぐさの原画を一枚描いても、それをアニメとして動かしてみた時に、ダサかったりテンポが悪かったり、動きとして全く成り立っていなかったりすると、やはり「アニメーション」とは言えないと思います。

私がアニメーター時代に一番良く言われていたのが、「イラストとしてはOKなのに、アニメ(動き)としては全く成り立ってない」でした…。
自分の原画を見せるたびに、本当にいろんな人から言われました。

逆にイラストは「一枚で魅せる」ことが大事なので、風の吹いてる方向だったり、今からこの絵の人物は何をしようとしているのか、何を考えているのかを、セリフもない静止画で表現する必要があります。

あとは作業的なことでいうと、アニメだと原画→動画→仕上げ→撮影と、色んなセクションの方に自分の描いた絵が回るので、絵を描くときの緊張感はイラストの非ではないと思います…。
「色んな方が自分の絵を見るんだから、気合入れて描こう!」といった前向きな緊張感ではなく、自分の描いた原画なり動画なりの線抜け等のミスを、次のセクションの人が(怒りを抑えながら)黙々と修正するハメになるからです…。

イラストだと最初から最後まで一人でやっているので、線抜けやはみ出しがあっても、「仕上げの時に直しちゃえばいいや」で解決するのでとても気は緩んでいます(笑)

――イラストを描く上での作画環境はどのような感じですか。

液晶タブレットを使っています。
線画~塗りはSAI、加工~仕上げはフォトショップです。

時間に余裕がある時は、ラフ、下書きはアナログです。
どうしても忙しいときなどは、ラフからデジタルで作業してしまいます。
(デジタルだと、線の直しの時間が大幅に短縮できるからです。が、やはり紙に鉛筆でアナログ書きのラフの方が、私の場合は、ポーズも表情も断然良いものができます)

――いまの絵柄が確立したのはいつごろですか?
参考にしたものや影響を受けたもの、上達のためにやってきたことやがあれば教えてください。


アニメ会社に勤めていた頃は、モロにその会社の絵柄の影響を受けていました。
体の丸みであったり、顔のパーツの比率であったり、ニュアンスや線の運び方や影の落とし方が、自分の手癖になっていて、身もふたもない言い方をすると、当時の私は「THE・京アニ」な絵柄だったと思います。
作オタの方とかですと、その人の絵の微妙な特徴から「この絵は誰々さんのだ」と分かったりするのですが、絵を見ることに慣れていない方からすると、同じような絵に見えてしまうんでしょうね。
イラストレーターになった当初なんかは、アニメーター時代の自分を知らないユーザーさんからは、「のんさんって、中二病の絵柄のパクリですよね」みたいなメッセージが結構来ていました(笑)

今の絵柄が確立したのは、自分が描きたい「可愛い女の子の顔」はこれだ!と、はっきりしたビジョンが見えてきてからだと思います。
絵を描く人には、誰にでも「自分の絵で一番大切なのはこれ」というこだわりがあると思うんです。
例えば、かっこよさであったり、線の力強さであったり、可愛さであったり。もっとピンポイントで言うと、フリルやレースの繊細さであったり、太ももの色っぽさであったり…

私の絵にとって、一番大切なのは「女の子の表情の可愛さ」でした。

「まつ毛は三本のが可愛いかな?目と口の比率はこのくらいかな?」とか、
「つり目の女の子、もう少しやわらかめの目元にした方が受け入れられやすいかも」とか、
自分の中の「可愛い」を明確にさせて、少しずつ少しずつ微調整していった結果、今の絵柄になったのだと思います。

――今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

ライブペイント!人前で絵を描くのが好きなので、一度はやってみたいです。
でも人前で話すのは嫌いなのでひたすら黙って絵を描くだけ…そんな作家嫌ですね(笑)

プライベートですと、自費出版で絵本を作ってみたいです。
可愛い装丁の絵本を見るとわくわくしますね。自分でも作ってみたいです。

――学生の間に「これはやっておいた方が良い」という事はありますか?

バイトをする、人と関わる、学校での勉強をしっかりする、サークルや部活動に入る、たくさん遊ぶ、外に出かける。絵をたくさん描くのはその次くらいでいいと思います(笑)

私は高校生の頃は絵をほとんど描くことがなく、完全に部活人間でした。
茶髪も化粧も携帯も禁止で、朝八時から夜七時まで部活、オフは年末年始とお盆くらいでした。
今の自分がこの生活をすると確実に死にますね…

先輩は無条件で神様ですし、部活を休むことイコール犯罪みたいなものでしたから、38度の熱が出ても無理やりランニングに参加してました(笑)

当時は、毎日怒鳴られて、泣きながら帰って、「こんなもん続けて何になるんだ」と、部活が大嫌いでしたが、その時にできた仲間や経験って本当に一生の宝だと思うんです。
敬語の使い方、後輩への教え方、自分の役回り、自分がこれをやらなきゃどれだけの人に迷惑をかけるのかとか、たくさんのことを学びました。

ありきたりな言い方ですが、「学生時代にしかできないこと」をやっておくのはすごく大事だと思います。たくさん友達を作って、たくさん勉強して、たくさん遊んでください。
他人に迷惑をかけない範囲でなら失敗もたくさんしていいと思います。
絵の職業に就いても、就かなくても、社会人になった時、絶対にその経験が活かされます。

――学生や業界志望者へアドバイスをお願いします。

アニメーター、イラストレーターになるのは難しい、特殊な仕事だ、と感じている方もいらっしゃると思いますが、今は、「絵の仕事に就く」というハードルは、良くも悪くもものすごく下がっています。
一般企業に就職する方が絶対に難しいです。

私なんかよりも、よっぽど絵の上手な素人さんや学生の方もたくさんいらっしゃるし、「絵を描く職業」に就く「だけ」なら、(それで食べていけるかどうかは置いといて)誰にでもできます。

会社の選り好みをしなくて良いのであれば、その辺の作画スタジオにポートフォリオを持っていけば、絵の上手さなんて関係なしに即採用です。絶対に。常識もいらないし、ひどい所だと画力すらいりません。絵を描く仕事をする所のはずなのに。それくらいハードルの低い業界です。

アニメ、イラスト業界に入ると、「自分がいかに周りに流されず、誠意と責任を持って仕事に取り組めるか」がすごく大事になると思います。
どの仕事に対しても言えることだとは思いますが…

正直、素人気分や学生気分の延長で、仕事に対して何の責任感もなく、月のノルマもこなさずに、平気で締切を破り、親に生活費や小遣いをもらいながら、「アニメーター」や「イラストレーター」の「肩書き」だけにしがみついて いる絵描きなんて世の中にいっぱいいます。

アニメが描きたいのではなく、「『○○会社』の『△△作品』に関わっている『アニメーター』の俺」というステータスに酔いたいだけの新人さんや、作品のキャラ表をゲットしたいがためにアニメーターになる人もいます。

相場を知らない新人さんを狙って、相場の半分以下のギャラで絵の依頼をしたり、挙句の果てにはギャラすら支払わずに音信不通になるクライアントや、平気で発注期日を過ぎたまま、こちらが催促するまで何の音沙汰もない編集さんもいます。

もちろん誠意を持ってお仕事をされている方もたくさんいますが、仕事を渡す側、請ける側共に、非常に意識やモラルの低い人が多い業界です。
その空気に流されて慣れてしまうと、楽ではありますが、どんどん自分というものがなくなっていきます。

そこに入って自分が何をしたいのか、何ができるのか、どういう絵描きになりたいのか、もしくはアニメーターやイラストレーターの肩書きに満足したいがために絵の仕事を目指すのか、絵の仕事に就きさえすればそこがゴールなのか、ぜひ学生である今のうちに色々悩んで、考えてみて頂きたいです。

[PROFILE] icon_kamijo.gif

のん(イラストレーター/漫画家)
アニメ制作会社にてアニメーターとして勤務、2012年よりフリーイラストレーターとして活動中。
「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」※8巻以降(ファミ通文庫)、「安達としまむら」(電撃文庫)、「引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている」(一迅社文庫)、「セツナトリップ」(ファンタジア文庫)、「アネモネ探偵団 1 香港式ミルクティーの謎」(角川つばさ文庫)、等多数

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