2011年2月に劇場版2作目も公開された、人気アニメーション『マクロスF』シリーズの制作を手がけている、株式会社サテライトより橋本トミサブロウ氏、八木下浩史氏にお越しいただき、アニメーション学科とゲームグラフィックデザイナー学科の1年生を対象とした特別講義を開催しました。
橋本氏は『マクロスF』にてCGIプロデューサーとして、八木下氏はCGIディレクターとしてご活躍されています。

CGIプロデューサー 橋本氏

CGIディレクター 八木下氏

「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~」
オフィシャルサイト
http://www.macrossf.com/movie2/
©2011 ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
今回は、実際に『マクロスF』を制作する際、ディレクターとしてスタッフへ指示を出すために作った画像データを見せてくださったり、作中に使われている素材データを例に遠近感やレイアウト、より効果的な画面の使い方を教えてくださったりするなど、アニメーションやCGを学び始めた1年生にとって大変興味深く、とても実践的な講義となりました。
他にも、橋本氏と八木下氏には1年生にもわかりやすいように、実際の制作現場での作業工程やそれぞれの役割のお話をしていただきました。その一部をご紹介します。
■『プロデューサー』『ディレクター』の仕事とは
橋本: | プロデューサーは、簡単に言えば作品全体の統括を行う人のことを言います。 監督をはじめ、作業スタッフ全員のスケジュールや作業内容の管理をするのが主な仕事です。例えば監督が「こんな戦闘シーンをやりたい」と言ったら、そのシーンに必要なスタッフを予算と照らし合わせて配置します。制作中はスタッフや監督の意見を吸い上げ、バランスをとりながら作品のスケジュールやクオリティを守るのが仕事です。 |
八木下: | CGディレクターは監督の下で、監督の求めるビジョンを実現するために、どういった技術のソフトが必要か、どういったスキルのスタッフが必要なのかを考えます。監督のやりたいことをよくヒアリングして、スタッフに詳細を伝えたり、逆に監督にイメージを提案したりします。制作中はスタッフが作ったカットに対して修正指示を出したり、自ら調整したりするのが主な仕事です。 |
■「アニメを作る=絵を描いているだけ」ではない

これからの作品制作に生かそうと
真剣に聞き入る学生たち
八木下: | 1本のTVアニメを作るには、放送スケジュールのように毎週1週間で1本のアニメができるわけではなく、だいたい5週間位かけて1本分のアニメが完成します。まだ入学されたばかりの皆さんは、アニメを作る=ずっと絵を描いているというイメージを持っているかもしれませんが、実際には絵を描く時間以上に打ち合わせをしている時間が多いのです。 |
橋本: | アニメを1本作るのには、原画を描く人、動画にする人、色を付ける人、編集する人・・・実に多くの人が協力して仕事をしなければなりません。全員が自分のやり方で、自分の好きなように動いてしまったら?良い作品はできませんよね。全員で同じイメージを共有して、監督はどんな世界観を持っているのかを1人1人が細部まで理解しておく必要があります。それぞれがバラバラの方向へ進まないためにも、打ち合わせの回数は自然と多くなります。 だからこそ、アニメを作る人には「相手の伝えたいことを理解する力」「相手に自分のイメージを伝える力」の双方がとても大切になります。 |
■優秀なスタッフとは
橋本: | さまざまな制作スタッフと仕事をしていく中で、「この人は優秀だな」と感じる人には、ある共通点があります。それは、「自己分析と他人からの評価が一致している人」です。自分には何ができるか?自分は何を得意としているか?を正確に自覚することは、実は簡単なことではありません。しかしこれが客観的にとらえられる人というのは、自ずと自分の力を一番発揮できる分野に適正に力を発揮します。また、逆に自分には何ができないのか、何が不得意なのかを自覚することも同様に大切です。みなさんもこれからアニメやCGを学んで行く中で得意な分野を伸ばし、苦手な分野を克服していくこと、またそれを客観的にとらえることを大切にして行ってください。 |
講義は、前述のお話の他にも、おさまりの良いレイアウトの取り方、効果的なタイミングの取り方、タメ・ツメの考え方、タイムシートの使い方などを映像で示しながら教えてくださり、大変内容の濃いものとなりました。
橋本様、八木下様、楽しい講義をありがとうございました。
学生達には今回学んだことを作品制作に生かして、より良い作品づくりを目指してもらいたいと思います。
■参加学生の声

大変実践的な講義で、1時間があっという間に過ぎていきました。アニメーションの制作工程のお話について、私はとにかく絵を描く作業ばかりをしているものだと思っていたので、話し合いが多いと聞いてとても意外に感じました。
また、ディレクターさんが制作スタッフに指示を出す際に使った画像を見せてくださったことはとてもためになりました。同じ「物が奥から手前に来る」というシーンでも、カメラワークや絵のタメ・ツメなどの演出1つでスピード感や浮遊感など受ける印象がまったく違うもののように写り、大変勉強になりました。ただ決められたコンテ通りに制作するだけではなく、作品をさらによく見せられる視点や感性を持ったクリエイターを目指していきたいと思いました。(ゲームグラフィックデザイナー学科1年生)
制作途中のCGを幾つも見せて頂き、本当に細かな部分までこだわられていることに感銘を受けました。動きの強弱や広角・望遠の使い分けなど、どうすれば観る側に狙った印象を与えられるのかを考えながら画面を創っていくことが重要なのだと学びました。
今回のお話を念頭に置き、技術面、そしてコミュニケーションの力も高めていけるよう、学習していきたいです。この度はお忙しい中貴重なお話を聞かせて頂き有り難う御座いました。(アニメーション学科1年生)