『このライトノベルがすごい!』大賞 特別講義を開催しました!

©『このライトノベルがすごい! 2011』
女優の栗山千明さんを選考委員に起用するなど、ユニークな作品募集を行ったことで知られる『このライトノベルがすごい!』大賞。先日第1回の受賞者が発表され、受賞作品は現在宝島社「このライトノベルがすごい!文庫」から刊行中です。
ノベルス学科では担当編集部の宇城(うしろ)卓秀編集長をお招きし、第2回の募集に向けた特別講義を開催しました。今回のセミナーレポートでは、宇城編集長の貴重な講義の一部をご紹介します。
『このライトノベルがすごい!』大賞とは?
―賞の特徴

一番の特徴としては、「本当におもしろい本を、発掘する目利きたちが選ぶ賞」だということであえて作家さんには選考委員をお願いしていません。作家さんはもちろんそれぞれ個性をお持ちで、物語を作ることに関しては専門家な訳ですが「今何が面白いのか」ということになると必ずしも精通されているわけではありません。そのため、書評家、ネット書評家、ライトノベルイベント主催者、専門店の書店員などを起用しています。
ネット上で選考の過程に加え、あらすじや参考評価を公開しているのもひとつの特徴です。これは「きちんと選考していますよ」ということをお伝えするとともに「こんな作品が投稿されています」「こんな賞なんですよ」ということを皆さんに知ってもらいたいなという狙いで行っています。
それから、大賞賞金の500万円。ライトノベルの作品募集では最高の賞金額を設定させてもらっています。
―何か光るものがあれば拾い上げます
第1回の選では、総投稿本数が752本。これを一次選考で112本、二次選考で26本にしぼり3次選考で5本としたのですが、平均的に整っているものよりも、どこか突き抜けた魅力を持った作品を選びました。
今回の作品で言えば大賞の『ランジーン×コード』はその設定が何より魅力に溢れていましたし、金賞の『僕たちは監視されている』は主人公たちのキャラが非常に立っていました。
女優の栗山千明さんの名前を冠した栗山千明賞の『ファンダ・メンダ・マウス』はライトノベルとしてはかなり異質だったのですが「突き抜けている」というのであればこれは間違いなく突き抜けており、栗山さんとの相談の結果、受賞にいたりました。
©大賞 『ランジーン×コード』

©『このライトノベルがすごい!』大賞
©金賞 『僕たちは監視されている』

©『このライトノベルがすごい!』大賞
©栗山千秋賞受賞 『ファンダ・メンダ・マウス』

©『このライトノベルがすごい!』大賞
その他受賞作品
©特別賞 『伝説兄妹』

©『このライトノベルがすごい!』大賞
©優秀賞 『暴走少女と妄想少年』

©『このライトノベルがすごい!』大賞
他の賞ではあまり選ばれないような作品であっても、何か光るものがあれば例え受賞とならなくとも何らかの形で拾っていきたいと思っています。
求めている作家像について
―新人に期待すること

「え?」と思われてしまうかもしれないのですが「ライトノベルとして刊行されても違和感がなく、かつ新しさを感じさせる作品」ということになりますね。この矛盾する二つをどうバランスをとって組みいれるのか――そこに期待しています。
また、皆さんプロの作家さんを目指されていると思うのですが、「作家になること」よりも「作家であり続けること」の方が難しいです。我々としては新人さんが1人前の作家になるまで育てていきたいと思っていますし、受賞者にはどんどん作品を書いてもらいたいと思っています。とにかく書き続ける体力をつけてください。
―編集の声に耳を傾けてほしい
「突き抜けたもの」を作るために、もちろん「こだわり」は必要ですが、「固執」するのはよくありません。
よりたくさんの人に楽しんでもらえるもの、商売である以上は売れるものを作ってもらいたいと考えています。そうして作家さんが実績を作ってくれれば、さらに挑戦的なものを書いてもらうことも出来ます。
編集者は蓄積された経験から、よりたくさんの読者さんに受け入れてもらえるよう、作家さんに提案をします。ぜひそれには耳を傾けてほしいですね。
これから応募をする人に向けて
まずは……応募要綱をきちんと守ってください。
当たり前ことのようですが、意外に見落とされがちですので気をつけてください。
―自分の書きたいこと熱く書いてほしい
まずは自分の得意なことや、やりたいことをしっかり書いてください。
書き手のみなさんが熱く書いた部分は、不思議なことにきちんと伝わってきます。とはいえ、ひとりよがりな文章や表現では読者に伝わりません。特にエンタテインメント小説では、読者を楽しませることが何より大切ですから、そこは意識して書いてください。周りに自分の作品を読んでくれる人がいれば一番いいですね。
―ばっさりと削ることも大切です
ひとつの作品を何度も書き直して応募する人や、ひとつのアイデアに固執する人がいますが、実際プロになってみると、そうそう固執している時間はありません。ダメだと思ったら次作に取り組む、アイデアが生かせないと思ったらばっさり切ってしまう――そういう勇気も時として必要になってきます。
その辺りを意識していただき、ぜひ皆さんからの力作の投稿をお待ちしています。
講義の後には、質疑応答の時間も設けられ、学生たちはまた新たな投稿目標に向けて気合を入れ直す機会となりました。
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宝島社では『このマンガがすごい!』大賞も開催しています。

©『このマンガがすごい! 2011』
第1回受賞作品
最優秀賞 『アプリオリ・ゲーム』

©『このマンガがすごい!』大賞2011
編集長イチオシ賞 『ハンパないすでぃ』

©『このマンガがすごい!』大賞2011
編集長ゾッコン賞 『ワラビモ』

©『このマンガがすごい!』大賞2011
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