『GENEZ』シリーズや『ヤングガン・カルナバル』シリーズの著者であり、大ヒット香港ムービー『カンフーハッスル』のノベライズも担当した深見真先生による特別講義を開催しました。

この日は深見先生も大好きだというスパイアクション映画『007 ダイ・アナザー・デイ』を題材に、講義が行われました。
まずはこの映画の冒頭10分間をよく見て、それを小説にするという課題を全員で行いました。
題材となった『007 ダイ・アナザー・デイ』は激しいアクションシーンが連続する作品なだけに、その躍動感を文章にすると、作者によって着眼点や言葉の使い方の違いがはっきりと現れます。
映像をよく見て内容をインプットしながら、自分ならどんなふうに文章として表現するかというアウトプットを同時進行で行う―予想以上に難しい課題です。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆
―「名文」と呼ばれる文章は、読んだだけでその情景が浮かぶ文章
映像を文章に表現することで、逆に、読んだだけで情景が浮かぶ文章を書く練習にもなります。
例えばよく使われる有名なコピーに「トンネルを抜けると、そこは雪国だった」という文章がありますが、この例からもわかるように“名文”と呼ばれる文章には、前後の文脈の有無にかかわらずその1文を読んだだけでも映像が目に浮かぶ表現がとてもたくさんあります。インプットした内容を文章としてアウトプット。アウトプットされた文章を読んだ人がその情景を頭の中に思い浮かべられたら理想的ですね。
―文才は、優れた表現に触れることで磨かれる
映画を文章にする以外にも、文章表現力を上げる方法があります。
それは、表現力が優れていると思う作家さんの本を丸写しすることです。
実は僕もデビュー前、古橋秀之先生の『ブラックロッド』という小説と、中山可穂先生の『猫背の王子』、そしてもう1つは映画『ファイトクラブ』の原作小説の3冊を丸写ししたことがあります。
1冊まるごと写すことで、好きな作家さんの独特の表現方法や癖が自分の手に馴染んでくるようになります。
もちろん、丸写しした内容を自分の作品にそのまま使ってはいけませんが、優れた文章を書けるようになるためには、やはり優れた文章にたくさん触れることが一番だと思います。
―小説家に必要なものとは?
みなさんは小説家に最も必要なものは何だと思いますか?
「アイデア」「夢」「思考を止めないこと」……。人によってその答えは違うでしょう。
ちなみに、ある作家はこの質問に「継続」と答えました。
また、別の作家さんは「運」と答えました。
「運」と「継続」。これには僕も大変納得できます。
小説家と聞くと、1人で机に向かっているイメージをされる方も多いですが、実はとてもたくさんの人に支えられて初めてできる仕事なんです。
今日は僕を担当してくれている編集者の森丘さんが来てくださっているのですが、僕は森丘さんにとても感謝しています。作家が実力を発揮できるか否かは、その実力を引き出す編集者さんにかかっていると言っても過言ではありません。
編集者さんとの出会いはまさに「運」であり、また、良い編集者さんと出会うまで執筆をしっかり「継続」すること。これまでの自分を振り返っても、やはりこの2点が作家にとって大変重要なことだと思います。
―好きなものがあるなら、「自分はこれが好き」と発信しよう!
「あの人にこれを書かせたら面白い!」読者や編集者さんにそう思われれば、思いがけない仕事が舞い込んで来ることもあります。
例えば僕の場合は軍事関係や銃が好きだ好きだと言い続けていたら、やはり関連した物書きの仕事が来るようになり、仕事をこなすことで更に読者の皆さんからは「あの人は軍事関係のことに詳しい」というイメージが強化されていきます。
今はツイッターやブログのように、誰でも情報を発信できる時代。
「こんなのは苦手」「こんなのは嫌だ」ではなく、「自分はこんなのが得意」「こんなことがとても好きだ」と、何かを誉めるような内容のことを発信していくことを大切にしていくと、良い出会いがみなさんを待っているかもしれません。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
課題は出来上がった人から深見先生に提出し、良い表現があったものを先生が学生たちの前で紹介。
今回の講義の中で同じ映像を見ていても、人によって言葉の選び方や表現方法がまったく違うのだということが実感できました。学生たちにとっては様々な表現に触れることでより自分の作品で使う表現の豊かさを磨く一日となりました。
卒業生や現役作家のみなさんからのメッセージや、
現役編集者の方へのインタビューも収録したパンフレットを無料で配送しています。