講義は学生との会話形式で行われた
プロダクション I.G(以下、I.G)より、経営企画・広報を担当されている上田陽子さんをお招きし、特別講義を開催しました。
今回の講義では、アニメーション業界で製作費がどの様に集められ、アニメーターなどの制作者に給与が支払われるか、大きなお金の流れなどについてお話頂きました。
製作費=アニメーター・制作進行の賃金でありません
「みなさんはアニメ制作会社に就職したいとお考えだとおもいます。当然、就職するとその会社からお給料をもらう、ともお考えだと思います。
では、その『お給料』はどのようにして発生するか考えたことはありますか?」
その言葉で講義はスタートしました。
雑誌やネットなどの情報で「総製作費○○億円!」などの数字を目にする機会があります。これは、その作品が完成するのにどれほどの費用がかかったか、という金額です。ですが、この「製作費」はそのままみなさんのお給料になるわけではありません。
劇場作品であれば、劇場で使用するポスターやチラシ、フィルムなどの制作費。多くのひとに作品を知ってもらうために雑誌や新聞、インターネットなどに広告を出す費用。ファンの方向けにイベントを開催するのであれば、イベント開催のための経費・・・など、映像制作以外の部分で必要となるお金があります。
また主題歌やBGMや効果音などの音響制作費、声優さんたちのお給料。また、みなさんが作業する会社の運営費・・・事務所の家賃や光熱費、ガソリン代なども必要です。そういった諸々の費用のなかのひとつにアニメーターや制作進行の給料があるのです。
あの作品、ネットでも盛りあがってるし、儲かってるんじゃないの?
最近、人気作品はネット上のコミュニティなどで、大きな盛り上がりをみせます。「この作品、こんなにネット上で話題になってるし、かなり儲かってるんじゃないの?」と感じる方もいるとおもいます。もちろんそれは間違いではありません。アニメのファンはインターネットから情報を多く得ていますし、近年はネットでの盛り上がり無しにヒット作となることは少ないかもしれません。
しかし「ネットで話題になる」ということが、必ずしも「お金が儲かる」ということではありません。アニメ関係者が利益を得るには「コンテンツが正しく活用される」必要があります。たとえば、本来であればお金を払って視聴してもらう映像が、インターネット上などで違法にアップロードされ、その映像を多くの人が目にすれば「タダで視聴できるなら、お金を払ってみるのはやめよう」となってしまうでしょう。
多くの人は悪意があって違法動画をみているわけではなく、作品が好きだから視聴しているのですが、それでは予想していた収入は得られず、最悪の場合、その作品は赤字となってしまいます。こういったことが続けば、極端な話、会社が倒産・・・という事態になってしまう可能性もあります。
インターネットは一例にすぎませんが、これから皆さんは「視聴者」ではなく「コンテンツ製作者」側になるわけです。
ぜひこれからはこのような視点ももって、世の中の映像作品に触れてみてください。
製作費の流れをわかりやすく解説
就職を控えた2年生達。真剣に耳を傾けていた
アニメーション制作会社の「その他」のお仕事
上田さんが所属されている部署は「企画室 経営企画・広報グループ」という部署です。アニメ制作会社に勤務していますが、アニメーターでも制作進行でもありません。
進路を考える際、多くの方がアニメーターや制作進行で就職されるかと思いますが、アニメ制作会社にも、普通の会社と同じように「サポート」の業務があります。
人事や厚生福利、採用などの処理を対応する「総務」、給与計算や入出金管理などお金の管理を行う「経理財務」のほか「法務」「版権管理」「広報」など、いわゆる現場業務ではない仕事です。
「わたしは絵も下手で、運転も下手。でもアニメに関わる仕事ができないか?と思っていたときに、今の仕事にであいました。わたしの所属している部署は名前の通り、会社の経営企画をおこなったり、作品ではなく企業の広報を担当しています。また、チャレンジ段階の業務も担当したりします。」
上田さんが通常担当している業務は「プロダクション I.G」という会社に対しての取材や、社長である石川光久氏への取材などの対応。会社見学の対応。また、自社作品の商品化企画など多岐にわたっています。
最近ではTVアニメ「戦国BASARA弐(ツー)」で実施しされた、登場キャラクターと縁のある地方との商品タイアップやお祭りタイアップも担当されたそう。
地方とのコラボレーションやレストラン展開など、アニメーション制作会社の枠に囚われない新しい試みに挑戦している、プロダクションI.G。
これからも、この様な柔軟な発想力・行動力によってさらに進化し続けることでしょう。
そんなプロダクションI.Gが産み出す作品達、これからも期待せずにはいられませんね!
これまで、作画やキャラクター、ストーリーの点からアニメーションを捉えることの多かった学生達。 様々な業務とその担当スタッフに支えられてアニメーション制作が成り立っているということを知り、新鮮な思いを抱くと共にそれらの業務にも大いに関心を持った様子でした。
お忙しい中、大変貴重な講義をしてくださった上田さん、本当にありがとうございました。




