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小説版『シュタインズ・ゲート』を執筆した海羽先生の特別講義を開催!


©2009-2012 5pb./ Nitroplus


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『STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート』(富士見ドラゴンブック)シリーズを執筆されている作家・海羽超史郎先生をお招きして、特別講義を開催しました。

第七回電撃ゲーム小説大賞(現・電撃小説大賞)にて選考委員奨励賞を受賞し、『天剣王器 Dual Load,Reversion』でデビューされた海羽超史郎先生。その後の死亡説まで出た9年にも及ぶ空白期間。アミューズメントメディア総合学院との縁で再び繋がった出版業界との関係。大ヒットを執筆中の現在まで。
海羽先生ご自身の体験から出るお話に、学生たちは皆真剣に聞き入っていました。

「死亡説も出た?! 9年間の空白期間」

こうした特別講義にお呼びいただいてアレなんですが、僕から皆さんにお伝えするのは「どうすれば売れるか」「デビューできるか」というストレートなものではなく、微妙に毛色が違った話になると思います。
というのも電撃からデビューさせていただいて数作を発表した後、僕は作家として9年間も沈黙していたからです。

これは小説が売れなかったとか出版社さんとトラブルを起こしたとかいうわけではなく、単に小説が書けなくなったんですね。個々の事情がありますので詳細は割愛しますが、とにかく仕事としては書けなくなった。それでも趣味で書いていけばいいかと思って、一時は業界から完全に離脱して、普通に就職しました。それからまたいろいろあって復活したわけですが、9年のブランクから復活なんてことは普通はありえないので、みなさんはデビューしたら作家という職業になんとしてもしがみついてください(笑)

僕の場合、なぜ復活できたのかというと、離脱したとはいえ親交のある作家さんや編集さんとの個人的な繋がりが生きていたからですね。そのつてから、この学院の大阪校声優タレント学科卒業公演が十周年記念ということで、その脚本を任せてもらえたんです。学院の先輩としても著名な雨木シュウスケ先生の『攻殻のレギオス』がベースの舞台脚本です。それが、小説何冊かとアニメ6話くらいの内容を1時間半にして何十人も動かす、という結構大変な仕事だったのですが、なんとか書けた。それが出来るなら他も書けるんじゃないかということで『シュタインズ・ゲート』をノベライズしないか、という話が回ってきたわけです。

この話のポイントは「仕事をもらうためには、自分がどのくらいの量をどのくらいまでに書けるかを見せる」ということです。つまり「こいつは文章量が書けるぞ」っていう信用が一番大事だということですね。

出版社は実力はもちろんのことですが、それ以前にまず書ける人に仕事を振ります。新人賞への投稿も、内容以前に「書ける」という証明をすることですよね。仕事をしたいならまず書けるということを示さなければならない。だから、書けなくなると本当に厳しいです。

「新人賞の意味」

新人賞への投稿は大変だと思います。でも、楽な抜け道はないと思った方がいいでしょう。

どこかで一度本を出した方なら、持ちこみで本が出る場合があります。ただしこれは持ちこみというよりは、プロの方がする営業なんですよね。デビュー前なら新人賞に対して「ちゃんと読んでくれているのか」「わかってもらえているのか」などなど不安なこともあるでしょうが、持ち込みを考えるよりちゃんと新人賞に出した方がいいです。

新人賞の素晴らしいところは、下読みさんが同じ作品を何度か読みまわして、大体これくらいの人がOKだと言った作品が生き残っていくという点です。このプロセスを経て、内容に対して信用が担保されるんですね。そうして最低限これぐらいは売れるだろうと保障される。

一方で、持ちこみにはその保障がありませんから大変です。持ちこみが本になる場合は、編集さんがそれを読んで「こりゃ死ぬほど面白い。他の人は読んでなくても、オレはこれ出すよ。これで負債何千万か出たとしたら、それかぶってもいいよ」っていう状態じゃなければ出ないんです。
作家にも編集さんにも、ごく稀にそういうギャンブルをする方はいらっしゃるんですよ。そういう持ちこみが本になった作品は底抜けに面白い。逆に言えば、そうでなければ本にならない。僕がちらほら聞いた話を総合すると、通常の持ちこみはほぼ本になりません。

もし、持ちこんで本になるようなレベルの作品なら、最初に応募した賞で間違いなく上まで行きます。
楽をしたいというのなら、やはり新人賞からデビューするのが一番楽だと思います。

「食べるために」

本格的な作家活動に入るにしろ、仕事をしながらデビューを目指すにしろ「どうやって食っていくか」という現実の壁には突き当たります。書けなくなることも、仕事が続けられなくなることもあります。それでも書く事が一番好きで、得意で、それ以外にやりたいことなんてないならどうするか。そういう状態になっても書き続ける為の力を、どうすれば維持できるか、一度考えてください。

皆さんは今この学院でいろいろ学ばれていると思うんですが、ここで先生が話されていることは、デビューするために必要な技術なのか、デビューした後に必要な技術なのかを見極めて聞いていただけたらと思います。

実際問題として、稼ぎながら書くって大変なんです。でも、稼ぎながら書かなきゃいけない場面はごろごろある。デビューしたってしばらくは稼ぎが必要な状態です。というのも、プロットを練って編集さんと話をし、2、3ヶ月後に締め切りを設定しますね。そうして本が出て、そこからようやく早くて2ヶ月、遅くても3ヶ月後に印税が入ってくる。つまり今お話させていただいた通りだとすると、普通にやっても半年くらいお金が入ってこないんです。

初稿が上がって出版されて印税の入ってくる4、5ヶ月の間に、じゃあ次の本の話をしましょうと前倒しでやっていく。そして回り始めたら、それを繰り返していくことで生活が回る。こうしてようやく職業として成立するわけです。

しかし、この半年かけたサイクルもあっさり崩れてしまうこともあります。本が売れない、書けなくなった、その他いろんな理由でですね。前回の本の収益で蓄えがあればしばらくはしのげますが、かといって我々作家は自営業なので、作家業に支障が出たらその原因は自分で解決しないといけない。誰も助けてくれない。周囲は笑い話にして終わりです。

とはいえ書けなくなっても現実の生活は続きますので、なんとか食わないといけません。というわけで別の仕事をしなければならない。でも実生活していると、本に向ける時間や体力や想像力ががりがり削られてしまう。結果、どんどん書けなくなっていく。

僕は集中して一気に書く方で、こうなると厳しかったです。途切れ途切れの時間で書くしかないなら、今までとは違うやり方が必要になってくる。結果として9年間も沈んでしまいました。

「プロとアマチュアの差」

いろんな作家さんから話を聞かせていただいたり、学生さんの作品を見て思ったことなんですが、プロとアマチュアの差はほとんど無いですね。ただ一点、なにが違うかと言うと「自分の作品をどれだけ客観的に見られるか」だけだと思います。

普通、350枚に収めて投稿した作品のほとんどは、物語の構造としてはあまり大差ないんですね。もちろんちょっとした差はありますが、そのちょっとした差に気づくかどうかなんです。徹底的に意地悪な読者の視点で、自分が書いたということをも除外して、自分の作品を見る。どこかの誰かが書いたわけの判らない未知の作品としてみるわけです。そうすると、問題点があがってくるはずです。

そうした問題点は「読者が読みたいところが書いてない」場合がほとんどだと思います。ちゃんと状況の説明ができているか、ストーリーに山があるか、情景描写ができているか、最後に「結局それはどうなったの? 重要な所が残ってるんじゃないの?」っていう疑問点がないか、ってあたりでしょうか。その上で、ようやく新人賞の最終段階で個性での勝負になる。そこまで行ったらあとは運です。

勝負の前に負けてしまうなんてもったいないですよね。だからその前に、しっかりと自分の作品を見つめなおしてもらいたいと思います。

「作家という職業」

どこかで本を出版して実績を残したなら、極論ですがその後は、いろんな出版社さんで仕事の話をすることも可能です。これは、新人賞を取ったこともさることながら、その後のパーティーに出席しやすくなるから、というのも大きいんですよね。仕事の話が転がっていそうな場所に顔を出せるようになる。

たとえば授賞式では「今回賞をとった○○です」といったお披露目が行われます。そこには新人受賞者の他にもいろんな作家さんや、メディアの方がいらっしゃいます。他にも忘年会、新年会などありますが、そういう場所は基本的に商談会でもあります。

そこで「○○社でこういうシリーズを出させていただいている○○です」という紹介は大事です。「いやー弊社でも○○は話題になっておりまして」「それでは今○○な話を書いてますが、こうした作品は御社では必要ありませんか?」という話になるかもしれない。出版社さんにも「今はやってないけど○○みたいな本が出したいな」と考えていてもきっかけがない、ということはあったりします。そういう話が拾えそうな場に顔を出しやすくなる。

このような「信用を武器に仕事を勝ち取る」形式は世間一般の仕事となにも変わりません。

出版社さんや編集さんは作家のことを自営業者として尊重してくれますので、世に多くある無茶な仕事よりは、格段にフェアな条件で仕事の話が出来ると思います。交渉力を磨くこともできるかもしれません。もちろん、それにかまけてばかりだと小説書けなくなりますので、上手にバランスを取ってもらえたらと思います。

新人賞に応募する、本が出る、印税でウハウハ! という夢を抱くことはとても大事なことだと思います。ですが、そのウハウハに至る過程は仕事としてのプロセスを煮詰める作業でもありますので、その先も見つめて、一つ一つ大事にしていって欲しいですね。

海羽超史郎先生プロフィール
第七回電撃ゲーム小説大賞(現・電撃小説大賞)にて<選考委員奨励賞>を受賞。
受賞作品の『天剣王器』(文庫化された際の題名は『天剣王器 Dual Load,Reversion』)で電撃文庫よりデビュー。著書は『ラスト・ビジョン』(電撃文庫)、『STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 円環連鎖のウロボロス①~②』(富士見ドラゴンブック)など。
最新作は『STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン(2) 』(富士見ドラゴン・ブック)

アミューズメントメディア総合学院では、著名作家をお招きした特別講義を定期的に開催しています。
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