去る2/25、アニメーション学科にて、アニメーション作家城井 文先生の特別講義が行われました。今回は、アニメーションの表現方法の多様性について、世界の作品を観せて頂きながら、様々な制作方法の解説を聞かせて頂きました。
普段テレビなどで良く目にする、いわゆるセル画調の画だけではなく、クレイ(粘土)や砂等様々な材料、手法を使って作品は作られています。
今回観せて頂いた作品は、土台にピンを刺し、刺す深さを変えることで、濃さの違う陰影を生み出し、それによって絵を作り、動かしたものや、奥行きや空間を自由に使った作品など、斬新なものが沢山。他にも、他学科の学生が制作した作品を観るなどし、個人制作のオリジナリティあふれる作品世界に、在学生達は熱中し、時に笑い、そして感嘆をもらしていました。
丁度、1年生が個人制作の講義で、10秒ほどの作品の制作に入ったところで、「アニメーションは、こんなに伸びのび表現することが出来るのか!」という発見の一日にもなりました。後日完成した作品にも、今回出会った作品のエッセンスが多いに生かされた様です。
講義後、場所を移して、最新作「続・象の背中 -バトンタッチ-」について、お話を伺いました。
――今回は、城井先生の最新作、「続・象の背中 -バトンタッチ-」についてお話を聞かせてください。
この作品は、結構スケジュールがタイトで、絵本版も同時に制作したので、大変でした。
――先生は作品を作る上で普段からネタを集めたりされているんですか?今度こういうアニメを作ろうと温めておいたり。それとも、作品を作ることが決まってから、素材集めをされるんでしょうか?
後者です!だから考える時間がまったくなくて、「続・象の背中 -バトンタッチ-」の時も、(美術の)背景は始まってから考えて(笑)
――クライアントから細かい指定はなかったのでしょうか?
わりとおまかせな感じでした。お父さんが娘のために実は何かやってあげていたというお話にして欲しいというのがまずあって。一作目でお父さんは亡くなっている訳ですけど、続編の歌の歌詞は全くそういった内容ではないので、その辺りの擦り合わせが難しかったです。かなり苦労しました。1回目の絵コンテは、只娘を見守るお父さんという感じ、2回目は娘のためにかなり奔走して、頑張って何かを作ってあげるという話、そして3回目にOKが出て、今回の作品になったんです。もう、2回描き直しをして、3回目の絵コンテが通らなかったら、この仕事断っちゃおうかと(笑)
――制作に入ってからもリテークは多かったのですか?
いえいえ。制作に入ってからは、自由に作らせて頂いたので、そういった意味でストレスはなかったですね。
城井先生直筆の象人間“お父さん象”と一緒に
――キャラクターのデザインについては何かありましたか?
一作目が決まるとき、Vコン
[1]
と呼ばれる、アニメーションで動く前のラフな絵が繋がっているだけのものを作って、プロデューサーの秋元さんにお見せしたんです。只、これまでの仕事の経験で企画は出しても通らないということは百回以上ありましたし、私の絵コンテを元に他のアニメーターの方に作って頂くという案もあって、決まるまで何ヶ月もかかったんですよ。だから、あの象人間以外考えてなかったんです(笑)
――この作品は、水彩画調ですが、デジタルも使用されていますか?
私の作品は本当にシンプルに作っています。鉛筆で描いた線に色を塗って。塗り絵みたいな感じなんです。3DCGを使ったりしているわけではないですし。今回、塗りはPhotoshop
[2]
です。この部分に関しては、アルバイトをお願いしました。色指定をして渡したんですけど、陰影とか、こだわりのある部分は自分でやって、割り切れる部分は人にやって頂きました。今回は教えている大学の卒業生がとても頑張ってくれたんです。仕事をしながらアルバイトしてくれて。私が昼間仕事して、夜、渡した絵にその子が色を塗ってという二交代制で(笑)
他にも友達なんかに手伝ってもらったんですけど、最後あたりは人がいなくなって来たので、弟にも頼みました。Photoshopの使い方から教えましたね(笑)
――今回のこだわりの部分というと?
キャラクターの陰影の部分です。ここまでしなくてもいいかも知れないけれど、薄い影を塗りで入れた上に、さらに、色鉛筆のタッチを加えています。このタッチは自分で入れないと、他の人にお任せしてしまうと同じにはならないので。
――作品を観た学生の中には大泣きしてしまった子もいましたね。
狙い通りです(笑)
――最後に学生達へメッセージをお願いします。
皆さん多分、好きなイラストレーターとか好きなアニメーターとか好きな映画とかから影響を受けると思うんです。私もそういう部分は大きいので。盗作は良くないですけど(笑)
皆色々なものから影響を受けて作品を作っているし、何もないところからは産まれないから。最初は真似でもいいのかなって。タッチとか。円ひとつ描いても、ひとりひとり違って、同じものはないですよね。どうしても自分の色が出てしまうんじゃないでしょうか。色々なものから寄せ集めて、それを自分なりに消化したものが、オリジナルになると思うんです。何年もそれを探している人もいますしね。とにかく、人と自分を比べないことです。
――本日はありがとうございました。
< 城井 文(しろい あや)先生プロフィール >
アニメーション作家 / イラストレーター。東京芸術大学出身。CINANIMA(国際アニメーションフェステバル/’95・オランダ)入選、BACA-JA1996最優秀賞受賞など活躍。Hands Two Hands「花火」PV、PAFFY「紅茶のうた」PVなどを手掛ける。
また原作者の秋元康自らがプロデュースしたDVD「象の背中-旅立つ日-」「続・象の背中 -バトンタッチ-」では作画・アニメーションを担当。絵本版では原画を担当。その活躍の場は広い。
[1]
Vコン…VTRコンテの略。絵コンテなどを撮影し、台詞や音楽に合わせて実際の作品の長さに編集したもの。
[2]
Photoshop…米国アドビシステムズ社が開発した画像編集用アプリケーションソフトウエア。フォトレタッチに使用される他、着彩にも使用される。




