――城井さんは、幼い頃からこの業界を目指されていたのですか?
そうですね。小さい時から絵が好きだったので、わりと自然に目指すようになりました。最初はイラストレーターになりたかったですね。あとは「MTV」が流行していた事もあって、「MTV」みたいな仕事を絶対にやりたい!とも思っていました。洋楽が好きだったので。
――どんな作品が好きでしたか?
例えば小学校の頃に見た「ヤクルト・ミルミル」のCMが好きでしたね。クレイアニメーションのCMだったんですけど、キャラクターが生き生きと動いているのを見て、子供ながらに「これは凄い!」と思いました。あとは、「まんが日本昔話」とかも好きでした。
――中学・高校生の頃は、やはり美術系の学部だったのでしょうか。
中学校では美術部でしたけど、美術の先生が教えてくれるわけでもなく……。何にもやってなかったですね。高校ではソフトボール部に1年間だけ。退部した後は、少ない「お小遣い」で行ける限りのライブに行きました。(笑)
――大学受験は順調に進まれたのですか?
いえ、3浪しました(笑)。あの頃は、「へたくそ」だということが解っていませんでした。自分は「形」が取れると思っていても、それが「立体的」であるとか「量感」があるとか……。多角的に見る事が出来ていなかったんです。
――その頃の苦労話などお聞かせください。
朝9時から夕方5時まで黙々と作品を創っていました。美術研究所では評価順に作品を並べますので、「自分の位置」がはっきりと解りました。常に競い合っていましたので、「絶対に負けない!」という張り合がありましたね。いま振り返ると「よくあんなことやったな」って感じです(笑)。あの頃は自分の存在が、学生でもなく社会人でもないという事がイヤでしょうがなかった。父親からは「就職しろ」とか「進路を変更すれば」とよく言われましたが、その度、「あと1年。あと1年だけ」と言っていました。
――大学時代はどういった生活を?
3年間の暗い浪人生活の後でしたので、その反動で、思いっきり「のんびり」「ゆっくり」しました。ちょうど海外旅行にも行き始めた頃だったので、アルバイトしては南の島へ行き、アルバイトしては……の繰り返しでした。私の作品の根本って、実は「遊び」であったりするんです。技術というものは、やればやるほど上がるものだけど、結局、最後は「個性」というものが重要になってくる。「個性」って結局、その人自身じゃないですか。自分にかっこつけて、かっこいい作品を制作したとしても、あんまり意味がない。自分が楽しいと思うことを表現するのが一番だと思うんです。では、自分が一番好きなことって何なんだろうと考える。そこで、「好きなこと」「楽しいこと」をやってみようって思ったんです。旅行に行ったり、ダイビングを始めてみたり……。すると、ちゃんと「好きなこと」がソースになったんです。そういう意味では、私には良い時期でした。学業だけではなく遊びもやりながら、またそれを学業に還元できるというのは、「美術」を専攻する醍醐味だと思います。おおいに遊びつつ、それを作品に還元する……。そうすると皆、楽しいんじゃないでしょうか。
アルバイトはいろいろやりましたが、美術系のアルバイトはあまりやっていませんね。大体はウェイトレスやビアホールで……。美術系のアルバイトでは、院生時に伊藤有壱さんの事務所で「ニャッキ!」とかをお手伝いしたのが最初です。
――ビアホール? あまりイメージとそぐわないですね(笑)。では、お酒のほうも?
学生のころはすごく飲みました。最近になってやっと減ってきたんですけど、学生の頃はよく記憶なくして(笑)
――またまたイメージとはそぐわない(笑)
そういう体験も、物語を創ったりするのに役に立つんです。人に気持ちを伝えるときって、同じような経験があった方がシンパシーとか分かりやすい。美術だけを中心とした経験も良いですけど、美術から離れれば離れるほど……面白い!と思っていましたから。そういうのも無駄じゃない、何をやっても無駄じゃない(笑)。ものすごい失敗だって、「生きる」という意味では、わりと重要かなって思います。かといって他人にすごく迷惑をかけるのはダメですけど(笑)。すごく楽しいことも、少し失敗しちゃったことも、私の作品に生きていたりするので、それもいいかなぁ……と。
――そうこうしていくうちに、次のステップについて考え始めるわけですよね。
大学院に進学した後、どうしようかと悩んでいたところ、ちょうどタイミングよく助手の話が舞い込んできて。それから3年ほど大学に勤務し、アニメーションの仕事を始めました。卒業制作の際、お世話になったスタジオの方が紹介してくださったんです。そしたらすぐに学研の付録に付いてくるVTRのオープニングの仕事をいただきました。その後、ちょいちょいと仕事が来るようになって……。それからイラストレーションの仕事もやり始め、今に至っています。
――お仕事はどういった形で依頼されるのですか?
人からの紹介が多いですね。私自身、アトリエにこもって仕事をするより、人と接しながら仕事をしたいと考えています。そういうところでの「関係」というのかな?「関係」を築くことができれば、次に繋がったりしますから。また、お金にならなくても人の作品を手伝う事で、多くの人と「お知りあい」になることもありますし……。縦の繋がりも、横の繋がりも大事です。
――これまで多くの学生を見てこられたと思いますが、城井さんが学生の頃と、今の学生との間に「違い」を感じることがありますか?
自分の時代との大きな違いはそんなに無いと思います。あえて上げるとしたら「コンピューター」かな?昔だったら「特別な人」しか出来ないものが、今では誰にでも出来てしまう。全員が全員、気楽に出来てしまったら、いったい自分はどこで勝負をすればいいのか…。「急がば回れ」ではないですけれど、自分の好きなことを見つけるのが「重要」になってくると思います。まあ、若いから余計に焦る場合もありますしね。「あんなこともしなきゃ、こんなこともしなきゃ」ってね。意外と何にもしなくてボケーとしているのが好きだったら、それもいいと思うんですよ。焦ったりしている学生もいる中で、ボケーとできる人は、結構強いのかもしれない。それはそれで極めてくれれば(笑)。誰でもすぐ好きなものがみつかるわけでもないと思いますから。だから私の言葉は「たまに」思い出してくれればいいです(笑)。
――ありがとうございました。
<聞き手:野口周三>
城井文
アニメーション作家/イラストレーター
東京芸術大学出身。CINANIMA(国際アニメーションフェスティバル/95・オランダ)入選、BACA-JA1996最優秀賞受賞など。
PAFFY「紅茶のうた」PV、石川マリー「Love~さよならは言わない」PV 。
原作・秋元康プロデュース「象の背中」アニメーションDVD。
絵本「もうどう犬リーとわんぱく犬サン」PHP出版。NHK教育いないいないばぁ「ゆうなちゃんアニメ」、CMアステラス製薬、など。




