SF小説は、宇宙が舞台となっていたり時空を越えることができたりと、現実離れした要素が魅力。しかしそこには、現実にも起こりうるリアリティをうまく混ぜ込んでいくことも大切になってきます。
今回はこれからSF小説を書いてみたいと考えている方に向けて、書き進める上で押さえておきたいポイントを4つまとめました。また、SF小説の概念や、小説を書く際の基本などについてもおさらいします。
SF小説とはどんなジャンル?
SF小説のSFとは「Science Fiction(サイエンスフィクション)」もしくは「Science Fantasy(サイエンスファンタジー)」の略。サイエンスは科学という意味で、その名の通り宇宙や地球、時間といった科学的な要素が絡んだ物語のジャンルのことを指します。
基本的には、“数百年後の世界”や“全ての人間が機械になってしまった世界”といったように、舞台にSFの要素が絡んできます。
小説の書き方の基本
SF小説を書く際のポイントをお伝えする前に、小説の書き方の基本をおさえておきましょう。
小説を書き進める流れとしては、まず“プロット作成”を行い、それに沿って“執筆”を進めていくというのが一般的です。プロットとはストーリーを要約したもので、小説の土台となる部分。これを元に本文を埋めていくような形です。
プロット作成では物語の舞台や世界・キャラクターの裏設定まで行うことがほとんど。これからご紹介するSF小説を書くときのポイントは、プロット作成にも活かしやすいでしょう。
小説の書き方の基本についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も併せて目を通してみてください。
>小説の書き方【著作実績700冊|プロット〜ストーリーまでプロが完全解説】
SF小説を書くときのポイント①サブジャンルを理解しておく
ここからは実際にSF小説を書き進めていく際のポイントをお伝えしていきます。
まず1つ目は、SF小説のサブジャンルを理解しておくこと。SF小説は舞台やテーマによってさらに細かいジャンルに分けることができます。これらのサブジャンルを理解しておくことで、より一層没入間のある作品作りに役立てることができるでしょう。
それぞれのジャンルは基本的には単独で成立しますが、いくつかが組み合わさった作品もめずらしくありません。
SF小説の主なサブジャンルは次の通りです。
ハードSF
SFジャンルの中でも科学性が強く、本格的な作品を「ハードSF」といいます。現実に存在し、すでに用いられている科学技術などを利用したもので、緻密に練られた設定や整合性のあるストーリーであることが特徴です。
【ハードSFの代表作】
コロンビア・ゼロ: 新・航空宇宙軍史
バビロニア・ウェーブ
重力の使命 など |
タイムトラベル
能力や機械によって時間を超え、過去や未来に移動するのが「タイムトラベル」です。タイムトラベルでできることは、賭け事に勝って金儲けをする、大切な人がいなくなってしまう前の時間に戻す、などと物語によってさまざまです。
また、タイムトラベルに制約をつけるため“タイムパラドックス”という問題を隣に置きながら物語を進めていくケースがほとんどです。タイムパラドックスとは過去や未来を変えることによる時間軸の矛盾のことで、“過去に遡って親を殺してしまうと、親から生まれるはずだった自分は現在の時間軸でどうなるのか”といったような矛盾です。
タイムパラドックスを解決する方法として、過去を変えた瞬間に世界線が2つに分かれる“パラレルワールド”を取り入れている作品が多く見られます。
【タイムトラベルの代表作】
時をかける少女
オーロラの彼方へ
七回死んだ男 など |
近未来
数年から数百年先の未来を舞台にした物語です。現実の延長線上にあり、リアリティのある未来の物語を書きたい場合に敵指定します。空中都市やコールドスリープシステム、第三次世界大戦など、今後本当に現実になるかもしれないようなものを取り入れているのが特徴です。
【近未来の代表作】
公開法廷 一億人の陪審員
パプリカ
ベーシックインカム など |
遠未来
近未来に対して、遠未来は何千年から何億年先の未来を舞台にした物語。遠い未来に人類がどのような暮らしをしているのかといった内容がメインになるでしょう。また、人類が暮らしているのは地球なのか、その他の星なのかといった部分もプロット作成時に設定を詰めたい部分です。
【遠未来の代表作】
銀河英雄伝説
地球の長い午後 など |
サイバーパンク
人体の一部や全てを機械的・生物工学的に拡張し、それらが普及した世界を舞台としたSFものを「サイバーパンク」と言います。“パンク”という言葉が指すように、抑圧的な社会へ反抗するようなストーリーが多く見られます。
人体を機械的に拡張する以外には、
- ネットワーク空間が高度に発展している
- AIが発展して人間に反乱を起こす
などといったものもあります。
【サイバーパンクの代表作】
ニューロマンサー
順列都市 など |
スチームパンク
“スチーム(蒸気機関)”と“サイバーパンク”が組み合わさってできたサブジャンルが「スチームパンク」で、蒸気機関が主要の原動力として普及している世界が舞台です。蒸気機関が実際に発展していた19世紀ヨーロッパがモチーフとなる物語が多く見られます。
【スチームパンクの代表作】
ディファレンス・エンジン
移動都市
屍者の帝国 など |
スペースオペラ
宇宙や銀河を舞台とした冒険劇を描いているのが「スペースオペラ」です。冒険劇だけではなく戦争のような大規模なものもスペースオペラに含まれます。科学的な考証がベースとなるハードSFに比べて、より娯楽的なストーリーが特徴であるため、ファンタジーに近い部分もあります。
【スペースオペラの代表作】
スカーレット・ウィザード1
銀河パトロール隊
銀河帝国を継ぐ者 など |
セカイ系
セカイ系は比較的最近生まれた分類の一つで、明確な定義はまだ定まっていませんが、一般的には主人公とその周りの人たちの関係性や戦いが世界の命運に直接繋がってしまう物語を指します。
【セカイ系の代表作】
イリヤの空、UFOの夏
ブギーポップは笑わない など |
SF小説を書くときのポイント②よく出てくる要素を知っておく
SF小説を書く2つ目のポイントは、SF小説によく出てくる要素を知っておくということです。
ポストアポカリプス(アフターホロコースト)
「Post(〜の後)」と「Apocalypse(世界の終末)」を組み合わせた言葉で、その名前の通り、何らかの理由によって人類や文明が消滅した後の世界を描きます。
人類や文明が消滅するということは、それまでに築き上げられたルールや秩序がなくなるということ。生き残った人間が食糧や拠点を巡って争ったり、人間同士の騙し合いが起きたりと、現実世界でも起こり得るようなリアルな部分が見どころとなるでしょう。
一方で絶望的な状況でサバイブする姿から生きる意味を見出せるような作品もあるため、ポストアポカリプスは作品の幅を広げる要素の一つになるでしょう。
ユートピア・ディストピア
ユートピアは日本語で「理想郷」を意味し、多くの人が思い描くような理想の社会を指します。
例えば
- 憎しみがない
- 老化や病気がない
- 飢えや苦しみがない
などといった社会です。ユートピアは悲しいことに実現させることは難しいため、物語に取り入れるのであれば“ユートピアを作り上げたことによる歪み“のような要素が必要となるでしょう。
対してディストピアはユートピアの正反対、人々が幸せに暮らしていくことはできないであろう最悪の世界のことを指します。ユートピアが存在する世界の一部にディストピアが存在する、といったような対比で描かれることも少なくありません。
SF小説を書くときのポイント③裏設定を細かく決めておく
物語の世界観にリアリティを持たせるためには、裏設定も決めておくことがポイントとなります。
- 舞台となる場所の歴史や文化的背景
- 登場人物を取り巻く環境(住んでいる場所や家庭環境、交友関係など)
- ファッションのルーツ
このようなポイントを中心に世界観を作り込んでいくことで、ちょっとした描写に背景が見え、読者が世界に入り込みやすくなります。
SF小説を書くときのポイント④細かな設定を説明しすぎない
裏設定を細かく決めるのがポイントと前述しましたが、これらの裏設定はすべて作品の中で説明する必要はありません。SF小説は、そもそもが複雑な世界観とストーリーになる傾向にあります。その中で、さらに細かい説明を詰め込んでしまうと情報が多くなりすぎてしまい、物語がなかなか前に進まなくなります。
どうしても伝えたい設定なのか、読者が求めている情報なのかどうかをしっかりと判断しましょ
まとめ
以上、SF小説の書き方についてでした。SF小説をはじめとした小説を書く際は、書きたいジャンルを読み込んで、そのジャンルの特性や好きな作者を見つけることが自分の中の引き出しを増やすきっかけになるでしょう。