―― 最後になりますが、これからアニメーターを目指すクリエイターの卵達にアドバイスをお願いします。
先日NHKのドキュメンタリー番組でボクの師匠でもある宮崎駿監督がちょうど同じ質問をされていて、こう答えていました。
「そんなことは言わない。若い人達は自分の意思で勝手にやるから。」
ああ、確かに。なるほど。と思ったんですが、それは宮崎駿監督が言うから説得力があるわけで、僕が言うと“投げやり”に聞こえてしまうので止めます(笑)。
―― 糸曽先生は“若手”になりますからね。
自分も学生の方と同じで、まだまだこれからだと思っていますが、自分がこの業界で活動してきて言えることは、“好き”の先に何があるか、何をしたいかが重要な鍵になると思っています。ただ“好き”というだけじゃ、この業界で活躍するのは難しいかなと、厳しい言い方ですけどね。スタッフロールに自分の名前を刻みたいだとか、DVDを出したいとかだけでは、その時点でその人は止まっちゃうと思うんです。その先の目標として、一つの作品を通じて何を言いたいのか?とか自分の生涯を通じて人々に何を伝えたいのか?という活動における自分のテーマみないなものを設定することが凄く大事なことだと思うんです。
学生という立場で周りに同じ“夢”を持っている仲間が居る内に、情報交換をしつつお互いを高めながらアニメーターとしての“生涯のテーマ”を探していくといいと思います。
あと一つは“周りと比べないこと”です。人は周りと比べることで“劣等感”を覚えたり、逆に“優越感”に浸ることが出てきますよね。でもそれって大半のケースで“井の中の蛙”[1]だったりするんですよ。そんなことよりも、自分が“何か?”を見つけて、それを見つめることで“何ができるか?”とか“何をするか?”を導き出すことにより、そこから“個性”が生まれてくると思うんです。
個性を磨くという意味でも周りと比べて浮き沈みするのではなく、自分の知識や経験の幅を広げるために周りを見るようにする。そうやって自分の個性を輝かして欲しいですね。
―― ありがとうございました。今後ますますの活躍を期待しております。
[1]:自分のまわりのせまい範囲だけでものを考えていることのたとえ。
■糸曽先生マメ情報■
糸曽先生のサングラス所持数は20本。
本日かけているものは失くした時のために同じもの2本持っている。