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イラストレーター 左さんロングインタビュー

左さんよりオリジナルイラストを
いただきました

数々の小説の表紙や、最近では「初音ミクの消失」シリーズのCDジャケットなどを担当している、イラストレーターの左さんにお越しいただき、キャラクターデザイン学科の学生によるロングインタビューをさせていただきました。

学生から集まった数々の質問に答えていただいたり、左さんのお仕事に対する考え方や信念のお話までお聞かせいただき、大変素晴らしいロングインタビューとなりました。
これから業界を目指す皆さんへのメッセージもいただきましたので、ぜひご覧くださいませ。

左さん、本日は学院までお越しいただき、ありがとうございます。
早速質問をさせていただきたいのですが、「左」というペンネームの由来について教えてください。

はい、よく聞かれるのですが、これは実は僕が左利きだからなんです(笑)。
と言っても単純にそれだけではなく、これは僕が絵を描いて人に見せるようになった時期の出来事に関係しています。

―どういった出来事があったのですか?

僕が学生の頃、まだネット環境などが発達しておらず、「コミュニケーションノート」というノートがゲームセンターなどに置いてあって、そこに自分の絵を残していくというやり方で絵を描くのが好きな友達たちとのネットワークを作っていました。そしてその作品の端に芋版で自分のペンネームを捺すのが流行っていました。

その頃僕にはまだペンネームがなかったのですが、そのノートを通して仲良くなった仲間の1人に僕と同じ名字の者がいて、周りの仲間からは、僕が左利き、彼が右利きなことからふざけて「右」とか「左」とかって呼ばれていたんです。
その時に即興で「左」という芋版を作って自分の作品に捺して行ったと思ったら、それを使い続けることになって、今に至っています(笑)

とても面白いきっかけで今の左さんの名前が決まったんですね!その名前を使い続けてきたことで、何か変わった出来事に遭遇したり、プラスに働いたような出来事はありましたか?

左さんがキャラクター原案を
担当したアニメ『フラクタル』

はい、それは僕が絵の仕事を本格的に受け始めたばかりの頃でした。コミュニケーションノートでのやり取りが活発だった時期から少し時代が進みまして、僕は自分のホームページを持つようになり、時同じくして同人誌即売会などにも顔を出すようになりました。
そのときからちょうど、同人誌即売会で名刺を交換した人や、サイトをご覧になった方からメールでお仕事の依頼をいただくようになっていきました。

そんなある時、PCゲームの原画の仕事をいただき、池袋にある会社に訪れたのですが、初めて担当者の方とお会いしたときに、「左さんって…もしかして、昔あそこのゲームセンターのノートに絵を描いていた人じゃないですか?」と言われたんです。

しかも、その会社には当時ノートで絵のやりとりをしていた仲間の1人も働いていて!
まさかこんな形で昔の仲間に会えるなんて思ってもいませんでしたし、本当に嬉しかったですね。

ただでさえ仕事がもらえること自体が嬉しいのに、担当者の方に名前まで覚えてもらっていたことが本当に嬉しくて。
それからはもう、もともとは暫定的なペンネームのはずだった「左」という名前をずっと使って行こうと決心しました。

ニックネームから広がるネットワーク。とても面白いエピソードをありがとうございました。
さて、では具体的に左さんの絵のお仕事についてお聞きしたいと思います。

―左さんの絵は、線や色使いがとても綺麗で、特に奇抜でカラフルな作風ではないにもかかわらず、とても印象に残る作品が多いですよね。何か絵を描くときのこだわりなどがあったら教えてください。

そうですね、今学校で絵を学ばれている学生さんなどは、絵の勉強を始める段階ですでにデジタルの機器を使っていたり、CGのグラフィックもたくさん目にしていると思います。
しかし僕が最初に絵を描き始めた頃は、まだギリギリでデジタル絵とアナログ絵の端境期でして、当然、絵を一番見ていた時期というのはマンガを始めとしたアナログのイラストでした。
だからなのか、デジタルでの作画環境になった今でも、アナログ時代に大切にしていた「まずは線を綺麗に描いてから色を塗る」という概念がとても強いことを自覚しています。

逆にCGやデジタル絵をたくさん見てからイラストレーターの業界に入った人は、まずは色を置きながら、面を合わせて絵を完成させていく傾向があります。自分も時代の流れに乗ろうと、一時期少しこの方法をマネしてみたのですが、これがどうもうまく行かなくて(笑)。
その経験を糧に、自分に合ったスタイルを探していったら今の作風にたどりついた。と言った感じでしょうか。

作画環境のお話が少し出ましたが、現在の作画環境について教えてください。

ちょうど今週PCを新調して、作業環境を大幅にパワーアップさせたばかりです。絵を描くときは『sai』というソフトを、最後の全体的な色合いの調整をPhotoshopで行なっています。僕が学生の頃はまだ『sai』は存在していなくて、本格的な作画環境を整えるにはPhotoshopかPainterを使うしかありませんでした。ただ、どちらも学生にしては高価なソフトウェアですので、当時の僕にはとても決心も要る買い物でしたね。
ただ、今の学生さんたちには『sai』という5千円で買える高性能な作画ツールがあるのでとても羨ましいです!(笑)

―作業中は何か音楽を聴いたり、DVDを流したりしていますか?

作業中はいつも音楽かラジオを聴いています。
よくこの業界のベテランさんになると、アニメのDVDやテレビをつけっぱなしで作業をするという話をよく耳にしますが、僕の場合はどうしてもテレビの内容が気になってしまって。
ラジオって、もともと視聴者には画面が見えないことを前提に番組が作られているじゃないですか。すべて音声で内容を完結できるようになっているのが、ラジオの一番の魅力です。あと、こうした仕事をしていると、テレビや新聞を自分から見ないと世の中のことがまったくわからなくなってしまうんですよね。そういう時事的な情報をしっかり把握しておくためもあって、よくラジオを聴いています。

文庫本の表紙やゲームのキャラクターなど、現在も多くの作品を手がけています

ありがとうございます。では、現在のお仕事のお話をお聞かせいただきたいのですが、左さんはイラストレーターとして約10年の月日を経ているわけですが、この職業に大切なものは何だと思いますか?

そうですね、絵を描いて10年くらい経った今思うのは、やはり「よく意見交換をすること」だと思います。技術を向上させることはもちろんですが、経験や年数が増えていくと、自然と相手にするお客さんの規模、その規模に比例してお客さんが求めてくるもののクオリティもどんどん比例して上がっていきます。
そこで「何を求められているのか」を、絵に着手する前にしっかりと忠実に汲み取ることがとても大切になってきます。

僕の体験談にはなりますが、何度デザインを上げても、「うーん、ちょっと違うんだよね」となり、これを繰り返すことは必ず誰しもあります。しかしこれが続くときというのは、作品のクオリティ云々という以前に、最初に見ている方向が違かったというパターンがほとんどなんですね。
僕なんかの場合、一度言われたことがあるのが「左さんの絵は真面目さがにじみ出ていますね」という言葉です。
しかしそう言われると今度はクライアントさんからの要望を真面目に聞きすぎてしまって、また偏った作品を提出してしまう。そうすることで今度はクライアントさんに「こういう風にして欲しい」というキーワードを出すことを萎縮させてしまったりして。

いくら仕事とは言えども、人と人との関係性で成り立っているものですからね。なので最近は、手を動かすことももちろんですけど、その作業に入る前に、必ずよく意見交換をするというプロセスを重視するようになりました。

「意見交換をしっかりしておくこと」。クライアントさんのためにも自分のためにも、本当に大切ですね。
そうして充実したイラストレーターとしての生活を謳歌している左さん。今、楽しいですか?

それはもちろん楽しいですよ!
これってすごく逆説的な話になるのかもしれないのですが、自分が「不完全」な状態だからとても楽しいんです。
仕事をしている中で、「あー、ここをもっと直せばもっと良い絵になるのにな…。」と思う部分は毎回たくさんあります。そうやって自分の絵に対して課題を見つけ、解決していくそのプロセスを経ることって、確実に「成長している」ってことじゃないですか。自分で自分が「今、成長できているな」って思えることって幸せなことですよね。
「まだまだ自分は絵が上手くなれるはずだ!」って。

ただ、これが「自分の描いた絵は完璧で、自分ではすごく良いキャラクターを描けたはずなのに、そのキャラクターがどうしても世間では受け入れられない」となってしまった時がとても怖いです。よく『上りの努力は楽しいけど、下りの努力は苦しい』って言うじゃないですか。きっと今の僕はまだまだ上りの努力の途中なんですよね。

市場が求めるものとのズレが自分の中に発生してしまうことや、経験値が飽和状態になることが僕が一番恐れていることです。いつまでも、柔軟な姿勢で臨めたらいいなと思っています。

この学校ではこれから業界を目指す若い世代の学生がたくさん在籍していますが、左さんはこの業界で生き残って行くには、何が大切だと思いますか?

僕が大切にしてきたことは、より多くの素晴らしい作品と出会って、その作品をよく研究してみることです。
それも、なぜ自分はその絵を素晴らしいと思って、どういう部分に惹かれたのかを、ふと立ち止まって考えてみてください。例えば僕の場合、ある女性のイラストレーターさんの作品を見るたびに、その色使いなどに感激してしまうのですが、感激して終わり。ではなくて、感激と同時に、その絵に比べて自分の絵には何が足りないのかを知ることを大切にしてください。

「センス」という言葉って、なんだか「生まれ持った才能」のようなニュアンスが含まれていますよね。でも僕は、センスや感性は、他の優れた作品をよく研究することで手に入ることが可能なものだと思っています。
とにかく絵をがむしゃらに描くという根性論でもなければ、生まれ持ったセンスで描いてごらんというものでもなく、程良いバランス感覚を保ちながら、良い作品に出会い、研究して、試してみる。この繰り返しを大切にしてください。

最後に、これから業界を目指す若い世代の皆さんにメッセージをお願いします。

こうしたメッセージをお願いされたとき、イラストレーターさんによってハッキリ次の2つの意見に別れると思います。
「すごく楽しいからぜひ目指してみなよ!」という人と「大変な業界だからもっと慎重になった方がいいよ。」という人。

確かに、イラストレーターという職業そのものがまだ新しく、なかなか著作権使用料だけで食べていくのが難しい部分があるのは確かです。努力したからと言って必ず結果がついて来るとも限らず、成功する保証がないことも確かです。

僕も地元の友達の多くが、会社に勤めて、結婚して、子どもを作って…という人生を歩んでいて、その姿を見て、自分は一日中絵を描いて、休憩がてらにゲームをしたりアニメを見たりして…あれ?僕だけ子どものときと何も変わってないじゃん(笑)なんて思って、みんながすごく大人に見えた時期もありました。

だけど、それでも僕は「すごく楽しいからぜひ目指してみなよ!」と言う方の人間なんですね。
好きなものに打ち込んで、頑張っている時間ってやっぱり何事にも変えがたい充実感を得られるんですよ。
だから僕は若い人たちには「未来は明るいよ!」と言いたいんです。

それには実はもうひとつ理由があります。
例えば小さい頃に「マンガ家になりたい!」と思った少年がいたとします。彼はおそらくジャンプなどに連載していて、すごいヒットを飛ばしているマンガ家さんを見てそういう夢を持つわけですよね。それはひとつの「成功した例」を見ているのであって、それがそのまま「夢」へと変化するわけですね。
人って、1個の前例があることでそれが「夢」に変わって、モチベーションにも変化が生まれてくるんです。

僕も一イラストレイターとして、そういう「成功例」になりえる人、将来誰かにとって憧れる存在になる可能性のある人には、どんどんこの業界に入ってきて欲しいと願っています。

イラストレーターとして成功し、誰かにとっての希望や夢になるのは、あなたかもしれません。
ぜひ、一緒にこの業界を盛り上げていきましょう!

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

多くの仕事を抱え、この日も締め切り間近にもかかわらずお話を聞かせてくださった左さん、本当にどうもありがとうございました。

なお、AMGキャラクターデザイン学科のパンフレットは、左さんのイラストが表紙となっています。AMGのカリキュラムや産学共同事業、デビュー・就職のための支援体制などを掲載したパンフレットを無料で配布しています。

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