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前田真宏×ソエジマヤスフミ アニメーションディレクター

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世界中から注目を集めている日本のアニメーション。その製作環境や表現はデジタルの力を得て、さらなる飛躍を遂げようとしています。その先駆者とも言えるアニメ制作会社ゴンゾ・ディジメーションの最新作『岩窟王』の前田真宏監督と、デジタルディレクターとして最先端のCGIを駆使し、イマジネーションの世界を広げているソエジマヤスフミさんが、学院祭初日に行われたキャラクターデザイン学科スペシャルトークショーに登場!『岩窟王』のクリエイティブワークや、ご自身の経験からクリエイターを目指す学生達へのアドバイスなどを語っていただきました。

■前田真宏×ソエジマヤスフミ インタヴュー

――前田監督がこの世界に入られたきっかけを教えていただけますか。

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前田 もともと絵を描くのは好きだったのですが、中学生くらいの自分の進路を考え出すようになった頃、ちょうどアニメブームに引っかかった世代で、ぜひこれを仕事にしようと。

最初は学生の頃にバイトとして入ったんですが、いきなりレイアウトを直すことになったりして結構たいへんでした(笑)。

――その当時に師事した先生ような方はいらしたんですか。

前田 アニメにはまったきっかけが、宮崎駿さんの「未来少年コナン」だったので、ぜひ一緒に仕事をさせていただきたいと思っていました。大学生の頃に「風の谷のナウシカ」が映画になると聞いて、勝手に休校して(笑)当時一緒に自主制作アニメ(DAICON FILM)を作っていた庵野(秀明)さん達と一緒に乗り込んで、ぜひスタッフにしてくれと。それから現場で色々と鍛えられました。

――ソエジマさんはいろいろユニークな経験をされているそうですね。

ソエジマ 監督ほど面白い話はないですけど(笑)。ずっと油絵を学んでいたのですが、仕事としてやっていくのは難しいと思い、陶芸とか半立体とか空間演出とかみたいなものに関心が移って、大学祭で展示したりしてましたが、卒業だというのに就職活動をしていなくて路頭に迷って(笑)。

しばらく運送のバイトとかしている内に、そういえばテレビゲームを作りたかったなと思いたち、テクモというゲームメーカーにアルバイトで入ってドット絵を打ってました。

その後、セガサターンが出た頃に、セガに移ったのですが、同時はプログラマーと企画とグラフィッカーが三つ巴で企画する中で、グラフィッカーの地位があまり高くなかったんですね。それで一生懸命つくった絵を使ってもらえないみたいなことが山ほどありまして……3ヶ月くらいかけて作った絵を出せないって言われたときにもうやめちゃえ!ってゲーム業界を飛び出してしまいました。そのせいで『サクラ大戦』の開発に加われなかった(笑)。

それから転々として、少人数でゲーム会社を立ち上げたり、企業のプロモーションビデオを作ったりする中で、いまの会社(GDH)の前身のひとつになるディジメーションに仕事をいただいていろいろやらせてもらっていたら、ゴンゾとの合併があって、さらに現場で揉まれていたら、だんだんいろんな仕事をふってもらえるようになり今にいたるわけです。

――お二人が最初に出会われた作品というのは。

前田 なんだっけ?(笑)

ソエジマ 僕は忘れてないんですけど(笑)『avex mode』のCGIロゴアニメーションをやらせていただいた時です。

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前田 現場で『ギルガメッシュ叙事詩』の話をしてたら異様に食いついてくる人がいて。“縄文土器”とかそんなネタに異常に食いついてくるこの人はなんだ?この人イケるかもしれない!とか思ったのはよく覚えてます。

ソエジマ マニアなので(笑) ただ、自分は実はあまりアニメを見ていない方だったらしくて、前田監督の「青の6号」も知らなかったんですが、逆に先入観抜きで出会えたことで、最初の仕事で客観的に「この人は面白いな」と思えたことはラッキーだったかもしれませんね。

――それ以降は、『ファイナルファンタジー・アンリミテッド』や『アニマトリックス』などで組まれたわけですね。

前田 ソエジマさんと組むと、お願いしたイメージを上回るものを返してくれて、でもそれが微妙にズレていたりすることがあるんですけれど、そのズレ感が面白くて、そこからキャッチボールが始まったりするわけです。

ディレクションの方法としては、最初にビジョンがあってその通りに作ってもらうようにするやりかたもあるんですが、自分の思いつかなかったようなものを投げ込んでもらうほうが面白いので、ソエジマさんとはやりやすいですね。

ソエジマ チームワークでやる上で、「1は1だから、1でつくれ」みたいに締めてやっていくとうまくいかないことが多くて……計画通りのものができても、やっぱり一人一人のいいところとかをそぎ落としちゃう感じがあるんですよね。

前田監督の場合、そういうスタッフの能力を見抜く眼をもっていて。自分のイメージを「この人ならこのニュアンスを表現してくれる」という具合にもっていけて、さらに個々人のアドリブを上手く生かしてくれるので、学ぶところがありますね。

――監督という立場になられる前は色々な方の下でお仕事をされてきたと思いますが、どのように監督になっていかれたのですか?

前田 難しいですね(笑)たとえばキャラクターデザイナーですけれど、どうやってなればいいのか正直わかりません。ただ、自分で言い張ることは第一歩だと思うんですよ。「俺はキャラデザできます!」「俺は演出できます!」って、最初は誰も実績なんてありませんから、何の根拠もないんですけど。「ホントか?」とかつっこまれてもとにかく言い張る。そういうのも大事かなと。

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『岩窟王』ではキャラクター原案をやって、自分でもいつかはキャラクターデザインをやりたいと思っていて、でもまだそのレベルには至っていないので、発展途上なんですけど。とりあえず今はどんな作品を作っても「監督です!」と言い張っていますが、いずれは「キャラデザです!」と言いたいですね。

――監督として『青の6号』を作られた経緯というのは?

前田 当時のゴンゾは友達同士の寄り合い所帯みたいな感じで小さかったんです。コンピューターの性能があがってきた頃だったので、デスクトップで映画とか作れるかもね、という話が現実を帯びてきたので、これで小さな仕事をいくつかやってみようということで、ゲームのムービーなどを作っていたんですね。

それまでセルアニメの作り方のノウハウはあったので、それとデジタルムービーを組み合わせて、長編ができるかもしれないと。それ以前に持ち込まれて眠っていた『青の6号』のアニメ化の企画にがあって、潜水艦ものですから、海の中はフル3Dで描いて、船の中は閉鎖空間でそんなに動き回ることもないから、3Dと拮抗できるような描き込まれたイラスト的なキャラクターを使ってバランスをとれるんじゃないかって。

――村田蓮璽さんの起用は。

前田 プロデューサーが同人誌を持ってきて「こんな人がいる」って。僕も名前は知らなかったのですが、ゲームの『豪血寺一族』(アトラス)なんかのビジュアルで絵は知っていて、興味をもっていたので、ぜひやってみたいと。ただ、描き込みがすごいので、アニメはやばいなーと思っていたのですが(笑)

――当時、『青の6号』には大変衝撃をうけました。

前田 評価は、高いような低いような(笑)。当時も3Dを使ったアニメはいくつかありましたけど、業界内での評価はそんなに高くなくて、「やっぱり水と油だね」と言われたりもしました。ただ、僕らはへそ曲がりなので「じゃあもっと混ぜてやる!これでどうだ!」みたいな感じで。正直なところ最初の1本目はちょっとドキドキだったんですけどね。出来上がったものに対して自信があるような無いような。出て行く過程がちょっと自信を持てなかったんですね。「ちゃんと商品になるのか」って。ただ、市場にでたら案外、もちろん叩かれたりもしたんですけど、意外と暖かく迎え入れられたというか。総スカンを食らうかどっちかだと思ったんですけどね。

――それからの作品では、段々と、ご自身の中でも手ごたえを感じられるようになったわけですか。

前田 そうですね。新しいツールでイメージをつくっていくのが面白くて。自分ではあまりいじれないんですけど。頭の中にあるイメージを「こんな絵をつくれば面白いんじゃないか」みたいに提案して、ソエジマさんのようなスタッフと一緒に相談しながらやれるみたいな、いい環境があるので。『岩窟王』もそういう感じでまた新しい段階に行こうというものですね。

――『岩窟王』の企画が生まれた経緯を教えていただけますか。

前田 学生の頃から、ずっとやりたかった小説があって、それは権利関係で実現しなかったのですが、その作品が『モンテ・クリスト伯爵』の翻案であることはわかっていたので、じゃあこっちをオレ流のSF仕立てで、ということを提案したらオッケーがました。それで、GDHはいまぜんぶデジタルで作業をこなしているということもふくめて、これまでとは少し違う形でなにかできないかと考えて、ソエジマさんに相談にしました。

ソエジマ 『岩窟王』の討入りで「またやってしまいましたという絵ができましたね」と聞いて、自分が参加する前の『青の6号』の頃もこんな感じだったのかなと。『ラストエグザイル』ではセルシェーディングで、いかに3Dとセルが違和感なく見えるかというマッチングに気をつかったりしているんですけれど、『岩窟王』では、たとえば「アニメだからこういうルックスに収めよう」という考え方をしなければどうなるかというようなチャレンジの要素が多いと感じました。

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もちろん商品なので、お客さんのニーズを考えるんですけれど、あえて、こちら側でお客さんの素養を決めつけてしまわずに、自分がカッコいいと思うものとか、バランスとかを“攻め攻め”で提案していけないかなということでやっています。『ラストエグザイル』でのアプローチとはぜんぜん違っていて、『岩窟王』の場合は、絵としての面白さや、物語を盛り上げる上でのビジュアルコンセプトという点で、3DCG的には恥ずかしいんだけれど、あえてやってみるとか、本来的にはNGなんだけどそれを見せちゃうみたいな……パンツを履かない製作姿勢と言っているんですけれど、そういうことをやっています。

前田 ぶっちゃけていうと、ポリゴンかっこいいよね、みたいな。もうホンモノのふりするのやめようよ。だってポリゴンなんだもんみたいな(笑)。

ソエジマ わりとそういうノリで。もちろん作り手を目指しているような人々からすれば、気になる部分がいっぱいあると思うんですけれど、あえてそういう目線をはずして、「何か変なことやってる」というのがキャッチになって、だんだん作品の深みにはまっていってくれるといいなと思ってます。

前田 3DCGを、ただリアルな空間をつくるためだけに使っているのはもったいないということですよね。リアルなパースペクティブの中に、パースを混乱させるようなものを置いて撮影したらどうなるのかと。最終的には絵として吐き出されて動画になるので、実際のリアリティよりも、その絵にしたときのレイアウトのかっこよさというのにこだわっています。

あとは、原作は会話劇中心なので、むしろ演劇的な空間になるだろうということで、さきまわりして3Dで舞台を作ってしまって、書き割りに徹してやろうというようなチャレンジをしています。

ソエジマ 背景は9割がた3Dです。基本的にはどんな角度からでもカメラで切り出せるような背景を3Dで作っておいて、それをカットにあわせて一枚の絵として切り出して、その上にキャラクターを置いて芝居をしてもらうということをしています。3D で美術を作るということに関しては業界内でも進んでいるので、今後のスタンダードになっていくと思います。

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3Dですべて作ってしまうというロケーションもあるんですけれど、最初に絵で書いてもらったイメージボードを、立体にしていくような作業を混ぜ込んで、ゼロから3Dで作ってしまうような背景と併せて、それぞれの有効な点を生かすように使っています。

キャラクターには、テクスチャーが貼られています。シンプルなシルエットでテクスチャ映えするようなシルエットを、監督のほうでコンセプトしていただいて、それをもとに松原さんにキャラを作っていただきました。さらに色指定してもらったところにテクスチャを張り込んでいます。

色々なソフトを使っているとわかりますが、デジタルで作業する上で重要なポイントは、時間的な実現性や、人がわかりやすい行程かということです。自分ひとりでやってしまう環境であればなんでもいいのですが、人に渡していく時に、行程じたいがわかりやすいかということが大切になります。

たとえば、岩窟王のテクスチャではPhotoshopであったりAfterEffectであったりで可能ですが、ただアニメーションをつくる上でベストな方法を模索していかなければフィルムにはならないんですね。時間がない行程のなかでたくさんの作業を行わなければならないので、今回はセルシスさんにお願いして、リーズナブルにテクスチャを貼れる専用のソフトウェアを開発してもらいました。

基本的には思い切りデジタライズされた行程では、どのような絵がつくれるかというチャレンジをさせてもらっています。ただ、技術ありきではないので、監督のイメージを実現するためにフィットする技術は何かなと当て込んでいって、寄せ集めてきて繋いで、道程を通したら、岩窟王の場合は背景を 3DCGI、キャラにはテクスチャを貼るという製作工程が生まれたわけです。

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――『岩窟王』のみどころというのはどこになるでしょうか。

前田 いろいろ絵作りの話をしてきましたが、実は物語が大きな見所になっていて、“連ドラ”としての面白さを考えようというのを共通の命題にもってシナリオを書いたり演出をしています。あとは、画像的なチャレンジで、あるいみ“手作り感”が出せればいいなと思っています。本当はもっと綺麗に作る技術もあるわけで、そういうチャレンジも部分的にやっていますが、セルの美しさばかりでないフラットなグラフィックの中で、個人作家がつくるような切り絵アニメーション的なものを、週間のローテーションで作れないかなということで、スタッフのみなさんに頑張っていただいています。

――これからクリエイターを目指す皆さんに、アドバイスがあればお願いします。

ソエジマ とりえあず「できます!」といってやりとげる執念、ねばりが大切だと思います。僕もいやらしい人間なので(笑)最初に怒ったり、「違うよ」ってつっぱねたりすることがあるんですが、それはその人の執念とかモチベーションを試しているところがあって、やはりガッツがないと乗り越えられないような仕事を渡したいと思うから、いろいろ言ったり注文したりするので、執念深さとか粘り強さを見せてほしいですね。

前田 いろいろ思うようにいかなくてへこむこともおおいですけど、そこでへこまずにやれるといいですね。

ソエジマ あとは、暇があれば自分の作品をあつめてポートフォリオを作り、チャンスがあれば「自分はこんなことができるけれど、何か仕事はないか」「あなたの仕事のこんなところで役にたてるのではないか」と売り込むとこと。ハッタリみたいですが、描く事以外に口を動かすこと……コミュニケーションもデザイナーの大事な能力だと思います。

働いていると、「あいつは口ばっかりで、たいして絵も描かないのに上手くやりやがって!」とか思う人に出会うことがあるかもしれませんが(笑)、その人は口でデザインするのが上手いんです。もちろんそれだけでは困りますが、自分がやりたいことをちゃんと相手につたえる能力を鍛えることは、仕事をしていく上で役に立ちます。それがないと、もし自分がすごく絵がうまくても、活躍できなかったり、現場に入ることができなかったりするので、門戸を叩くときにはちゃんと大きな声を出して叩かないといけません。

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前田 そういうところはありますね。僕たちも常に新しい才能には門戸を開いているので、逆にいえば是非みせてほしいと思います。

ソエジマ 最初はだれも実績はないので、自分の能力をプレゼンしないといけないじゃないですか。その時に、自分を買ってくれた人っていうのは、先入観なしに自分を見てくれて、「この人に任せてみよう」という度胸があったり、自分の本当の素養を見抜いてくれる能力の持ち主で、「この人なら将来こんな面白いことができるようになるのでは」と育ててくれる能力の高い人だったりすると思うので、そのお付き合いは大事にしたほうがいいと思います。

前田 ホントに業界なので、自分も監督と名乗っていますけれど、付いてきてくれる人がいなければ何もできないですから、これまで支えてくれてきた先輩やスタッフといった、ありがちですけど人間関係というのが本当に大きいです。

――逆に一緒にやるのに困ってしまうような人っていうのは。

前田 もちろん、期待して仕事をお願いしたのに、返ってきたものをみてうわっと思うこともたまにあります。お願いしたのは自分なので、「ここはこうでしょう?」と直したりして、最後までつきあいますけれど……アピールが大切という話もありましたが、そういう(絵を描く)部分での基礎体力というのはあらかじめ鍛えておいてほしいですね。

ソエジマ 自分も昔、使ったことのないソフトを「使えますよ」と言ってしまって、1週間くらいで猛勉強してなんとかしたことがありますけれど(笑)。ただ、ポートレートを見せて仕事を請けたときに、クライアントから期待されたものを返すことができなかったら、次は無いか、今よりももっと努力が必要になるかのどちらかです。だから、自分で口にしたことはちゃんと責任を取るというのが大切です。

逃げてしまう人っていうのは、それが習慣化してしまって、会うとそれがなんとなくわかっちゃうんですけれど、逆にガッツがある人であれば、今の素養からどう成長するのか見てみたいと思います。お付き合いの中では、ダメだった人でも、一年たったらすごいものを作れるようになっていたりして、その人なりに経験を積んでいて、それならもう一度一緒にやってみてもいいかなと思うこともあります。

――これからクリエイターを目指す人の作品などを評価する基準みたいなものはありますか。

前田 自分では、オリジナルかどうか、という部分を大切にしますが、技術的にすごいものと、その人のオリジナリティとの二つの評価軸があると思います。完成度としては低いものでも、この人にしかかけないのでは、というオリジナルのもの、将来化けるかもしれないという部分は評価したいです。

もちろん、皆に届きやすい流行りの絵で自分を固めていくということも有効なアピール方法だと思うんですが、プラスしてその上にどれだけ自分のものを積んでいけるかということがとても気になりますね。

ソエジマ うちで仕事をしたいという人の作品を見せてもらって「自分は10年前こんなすごいものつくれなかった!」ということもよくあるんですが、正直な話をすれば、自分のお願いしたい仕事にはまる人を採用したいという思いはあります。

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たとえば、監督の言うようなすごいオリジナリティをもっていて、仕事としては当てはまるものがないという人には、惚れ込んだら、土俵を用意してあげたいと思いますが、幻想をいだかないでほしいのは、仕事としての競争率がすごくはげしい、生き残るのが大変なところを紹介したりとか、夢を抱いている人にとっては「なんで自分がこんなことしなければいけないんだ」と思うような仕事だったりとかもあると思うんですよ。そこで「なんで自分がこんな思いをしないといけないんだ」という人は生き残っていけないと思います。

まずは作品を見せることで、そのときはいろいろなことを言われると思いますが、くじけずにガンガン持っていけば、叩かれているうちに「この方法じゃだめだな」とか「やっぱり正攻法がいい」とか色々わかってきます。それはもう自分のやりたいジャンルをピンポイントで攻めまくってはじめて見えてくるもので、基本的には自分が書き溜めたものを、どこかの誰かが見てくれていて、拾ってくれるということは無いので。

前田 親父の小言みたいですが、叩かれるうちはラッキーですね。具体的な指摘が返ってくるということは、ちゃんと見てもらっているということで、「この絵は嫌い」と言われたとしても、極端に解釈すればそれは「嫌い」と認識されたわけで、その逆をやればオッケーなんだということもいえるわけです。

ソエジマ 『岩窟王』でも、テクスチャや3DCGの背景などすべてが順風満帆だったわけじゃなくて、いろいろ否定的な意見もありましたからね。

前田 「テクスチャーが気になって芝居がみられない」とか「こんなにガチャガチャで一本にまとまるのか」とか色々いわれたのに、ちょっとは耳を貸して(笑)少しだけなおしたり、やっぱり直すのやめたりとフラフラしながらいまの形に近づいたわけで、最初っから誰か天才的な人が完成形を作ったわけではないです。

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ソエジマ これがやりたい!ということがあればということがあれば、それを曲げずに粘ることがとにかく大切ですね。

前田 それから、学生時代は大事にしてほしいですね。学校というのはいろんなことをやっているいろんな人がいて、お互いに影響しあうことができる環境だと思います。仕事をするようになると、ビジネスの関係になってしまうので、ソエジマさんのように影響しあえるスタッフに出会えることも少ないので、その環境を大事にしてください。

ソエジマ 無茶なことでも思いついたらやってしまうといいと思います。若いうちなら許されますから。スキンヘッドにして、そこにイラストを描いて持ち込んだりとか、広辞苑みたいに分厚いマンガを描いたりとか……受け取っても見てもらえないかもしれませんが(笑)。とにかくそういう勢いを大事にしてがんばってほしいです。

――ありがとうございました。

聞き手:野口周三(映像プロデューサー)
構成:ヒライワシンスケ

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前田真宏

1963年生まれ。東京造形大学在学時よりスタジオジブリ、GAINAXにアニメーターとして参加。1992年、有志とともにアニメーションスタジオ「GONZO」を設立。1998年、GONZOの出世作となったOVA作品「青の6号」で監督デビュー。その斬新な映像表現に業界内外で高い評価を得る。最新作では「マトリックス」のアニメ版「ANIMATRIX」の監督、「KILL BILL」のアニメーターを務める。「ANIMATRIX」は全世界で100万本のセールスを達成、アニメーション監督として一躍その名を広めるに至る。

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ソエジマヤスフミ
武蔵野美術大学造形学部油絵科を卒業後、セガ・エンタープライゼス等ゲーム制作を経て1999年より現在(株)ゴンゾ・ディジメーションで3DCGIチーフ/アートディレクターを勤める。、TVアニメ『LAST EXILE』でのCGIディレクションのほか、『ANIMATRIX』『Final Fantazy:Unlimited』などで前田監督との競作も多く、最新作『岩窟王』ではこれまでのテレビアニメーションになかった斬新な映像表現を展開している。

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