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小坂崇気 プロデューサー

最近、注目を集めているエンターテイメント企業の一つに、「ファントム」「機神咆吼デモンベイン」といった人気ゲームタイトルを手がける株式会社デジターボがあります。ゲーム、アニメ、玩具、出版……そしてビジネス関連ソフトウェアまで。ありとあらゆる方向に向かって創造の環を広げていく“クリエイター集団”のチカラの秘密に迫るべく、代表取締役・小坂崇気さんにお話をうかがいました。

■小坂崇気 インタヴュー

――まず、プロデューサーであると同時に会社の経営者としてお仕事されてきたわけですが、ここまでの経歴というか、経緯みたいなものをざっとお聞かせ願えればと思います。

photo12.jpg最初は、コミケの同人誌からです。高校の漫研で同人誌を作ったんですけど、これが全然売れなかった(笑)。「あ、これじゃ売れないんだ!」と思って、一生懸命考えて、「ユーザーニーズを知ろう!」と思ったんです。人が表紙を見て、手にとって、中をあけた瞬間にどう思ったら買ってくれるのか? っていうのを考えながら作ってみよう、と。ただ描きたいものをやるのではなく、本としてのコンセプトを明確にしたり、表紙デザインに工夫をしたら200部くらい売れたんですよ。「こうすると売れるんだ!」ということがわかったんですね。

それから面白いものを自分で企画して、自分で描いて……すると部数も増えていくわけですよ。資金は自分で工面し、しかも販売もやるじゃないですか。企画からマネージメント、販売まで全部やってる。いま考えると、同人誌って、会社をやってるようなもんだったんです。

――ミニチュアみたいなものですよね。

当時は、ただ売れないことが悔しくてって感じだったんですけどね。最終的には1000部くらい売れたんですよ。その同人誌をきっかけに、アニメ『マクロス』を企画した「スタジオぬえ」に声をかけていただいて、勉強させていただけることになったんです。高三の三学期の終わりごろですね。

ところが、お金をもらえる訳じゃないので稼がないといけない。そこでもう一つ、声をかけてもらっていた編集プロダクションでアニメ誌なんかを作る仕事や、『マクロス』関係の本の編集とか、ライティングとか、挿絵も描けるんで挿絵したり、ということをやってました。

それから18歳から23歳くらいまで編集の仕事をして……なんかやっぱ物足りなくなったんですよ。自分は物作りの人を目指していたわけですよね。ゼロを一にする仕事をやりたかったのに、できあがったものを加工する仕事をしている。そう思ってるところに、おもちゃの企画会社から声をかけてもらったんです。でも、そっちへ移ったら、給料がそれまでの半分以下になってしまう。「生きられるの?」っていうくらい(笑)。

――それは(笑)。

で、悩んだんですよね。やっぱり自分はお金じゃなくてやりたいことをやれる環境だな、ということを思いまして、そちらへ移ったんです。キャラクターデザインがメインの会社だったんですが、プラモデルの企画開発もやる、オルゴールもやる、雑貨もやる、玩具もやる。ファミコンもやってたという、すごく変わったところだったんです。社長さんがなんにでもチャレンジする方で、人手もないからなんでもやらされたんですよ。

自分は、もともとロボットに変形する車のおもちゃの企画をやるために来たんですが、それをやりながら、ファミコンのRPGのシナリオとマップとキャラクターと……プログラム以外のことは何でもやりました。なぜか、ぬいぐるみのデザインをやったり、雑貨とか、女の子向けのおもちゃとか。すごく充実してましたね。そこでいろんなことを学ばせてもらいました。躊躇する必要ないんだなーていうことを感じさせてもらったんですよ。全然、知らないし、わかんないのに、平気で仕事を受けちゃうんです。で、なんとかしてしまう。

――それはすごいですね。

クリエイティブな人間にとって、やっぱ新しい仕事が来て、「うわっ。苦しい。わかんない。でもやりたい」みたいな感じで作っていくのがいちばん楽しいんだな、ということを痛感しました。

――そこから独立をされて、会社を作られたんですか。

いえ。UFOキャッチャーのぬいぐるみを専門にやってた会社に移りました。そこでは、朝昼晩とぬいぐるみばかりデザインし続けて、たくさんのヒット商品が生まれました。その会社を辞めた後、いよいよ一人で始めまして、それがなんとか軌道に乗って、人も増えてきたんで、「デジターボ」の前の会社を作ったんです。ところが、経営を人に任せて、自分は作ることだけに集中していたら、いつのまにか経営不振になって会社が潰れてしまったんです。

――大変だったんですね。

一緒にやっていたスタッフが「続けるんだったらついていきますよ」と言ってくれて。それで「デジターボ」ができました。いまから7年前ですね。

――「デジターボ」発足の当初から、何かコンセプトというか、指向されたものというのはあるんですか。

photo21.jpgクリエイターがクリエイティブな仕事に集中して力を発揮できる空間を作りたいということはありましたね。アニメの現場から入って、いろいろ見てきて、そういいう空間ってのはなかなかないな、と思っていましたから。自分が納得できるクリエイティブな空間というと、それにはまず「ストレスのない道具、たとえば高性能なPCとかが提供されていること」とか、「欲しい資料を提供してくれること」があるだろうと。オフィスでも、机が120センチ幅以上あって、向こう側に本棚がずらっとあって、自分の好きなものを置いても怒らない会社、っていうイメージがある。大手の会社からするとたいした環境ではないかもしれませんが、弊社としてはかなりがんばってそれを提供しています。それから「仕事に関する最低限のモラル――納期に間に合わせるとか、困っている人がいたら手伝うとか――を満たしているのであれば、ある程度、各人のペースの仕事を許容する会社」……とか、自分なりにある程度実践している会社だと思っています。

――人を使うとなると難しいことですよね。とくに最後のものとか……。

難しいですね。色々な人がいますからね。もうとことん甘えちゃう人もいるし、綺麗にやってくれる人もいるし。自分のフィロソフィーは守りつつ、でも思い通りに行かない場合は落としどころを模索しないといけないわけですから、理想の会社の環境作りは永遠の課題です。

――「クリエイターを活かして行く」っていうことについては、どういう考えをお持ちなんでしょうか。

いまのところ人事は全部、自分でやってます。新規採用に応募してくるメールは、全部、自分で見て、面接までやっています。クリエイターの会社は――まあどこの会社もそうだとは思うんですけど――やっぱり人材が全てですから、いい人を取ることがなによりも大切だと思います。

――採用にあたって、ポイントとなるのはどんなところでしょうか。

ひとつは、特化した能力があれば、ある程度マイナスがあっても許容するということです。たとえば、多少遅刻するとか、挨拶が出来ないとか。ウチはまだ、知名度ないんで、「あのデジターボに」といって来る人はあまりいません。大手を落ちた人が大勢来るんですが、面接してみると、人柄もいいし、能力もあるのに「ああ、この人、一般常識のなさで落ちてるんだな」と思うことが結構あるんです。でも自分はその人を採ってしまう。やっぱり大手に勝つには、突出した能力はあるんだけど、他のどこかが欠落してるがために大手に入れなかった人を入れよう、と。問題は入れたあと解決しよう、と。そういう考え方ですね。

もうひとつは、潰しがきく人を入れようというのがあります。「潰しがきく」っていうのは、マーケティング感覚を自分の中に持っていて、ちゃんとユーザーの求めるものの提供が出来る人ということです。相手は何を求めているんだ、よし描いてあげよう、言ってるのはこういうのでしょ? ……というふうに相手のいうことを理解して形にできる人。そういう人はいつまでも第一線で活躍できます。

――それは、クリエイター同士の関係でも生きてくることじゃないですか。

そうですね。価値観をすりあわせたり、落としどころを見つけたりすることですね。アーティストであってはいけません。アーティストである人にはすごく尊敬するし、憧れる部分もあります。でも会社の中には必要ないな、と。自分にとっての「クリエイター」とは何かというと、「アーティストであっても、同時にマーケティングやビジネスプランを優先できる」人ということになるんです。

そもそも、クリエイターってサービス業なんですよ。クリエイターを目指す学生さんにも、いかに人にサービスを提供するか? ということをもっと念頭においた人が増えることを願っています。でも、そういう感覚って、学生のうちはなかなか想像できないでしょう。実社会で学ぶっていうところは、確かに大きいですよね。だから、企業に学生を派遣したりするのっていいと思うんですよ。

――学院でも、ゲームクリエイター学科やアニメーション学科では、AMGインターンシップをやっています。やはりそれで成長は早まりますね。

早まると思います。自分の場合は高校卒業して、すぐに就職したのが良かったと思うんですよ。でも、そういう機会に恵まれる人ばかりではないので、専門学校が積極的に、もっともっと打ち出せるといいんじゃないですかね。システマティックに。

photo3.jpg――デジターボでは、北京に支社があって、今度上海にも支社を出されるとのことなんですが、アジアに向けた展望といったものをお聞かせください。

アジアだけに特化しているつもりはないんですが、近くて行きやすいってことで。日本のゲームやアニメコンテンツというのは世界に誇れるものだと思いますので、どんどん外に向けて挑戦してみたい。

――中国でも、日本のコンテンツは人気なんですか。

香港とか台湾では人気があります。でも……日本人が思っているほど中国では強くない。中国本土では、むしろ韓国のキャラクターが強いですね。それに日本の文化よりも欧米の文化のほうが浸透している感じを受けますね。あと、ゲームについても、韓国と台湾のオンラインゲームなんかが人気です。これからますますそちらのほうが流行りそうじゃないですか。

――オンラインゲームで遅れを取っている分だけ……。

そうです。これは日本がもっとがんばていくべき分野です。でもコンテンツにいちばん大切なのは、オリジナルの世界観とキャラクターだと思っています。そういう意味では日本はまだ抜きんでているし、その牙城を崩されないようにがんばらなくてはいけません。

――インタビューの最後に、若いクリエイター候補の人たちに対して何かメッセージ的なことをいただきたいんですけれども。

……色々ありますけど。天才はほとんどいない、というのが自分の持論です。能力的には誰もが大差ないんです。差がつくのは、ヴィジョンがあるかどうかと、やることにプライオリティをつけられるかどうかなんですね。

自分には特別な才能はないと思ってるんですよ。ただ、何があるっていったら工夫する力ですね。あと、常に問題意識を持っていること。自分の行動とかもそうですが、世の中に出ている作品をみて、「もっとこうすれば面白いのに」っていうことをいっぱい思う。それで――出来ないことはもちろんあるけれど ――出来ることはやっていく。そうすると、自然と、ふっ、と後を向いて見たらライバルと差がついていることもあります。……ていうことを意識してやるといいんじゃないかな、と思います。とにかく自分の可能性を信じて、高いモチベーションを維持しながらがんばって欲しいです。

聞き手:佐藤心
構成:伊藤剛(マンガ評論家)

[PROFILE]
kosaka_prof.jpg小坂崇気
株式会社デジターボ代表取締役。自らアニメーション、出版、ゲーム、玩具と様々なエンターテイメントに携わった経験を基に、あらゆる方向性へと創作の環を広げる“クリエイター集団”デジターボを率いる。チャレンジ精神旺盛で、モバイルや教育関連ソフトウェア等にも活躍の場を広げ、最近ではセキュリティソフトウェアまでリリースした。ゲームブランド「ニトロプラス」が2004年、ガイナックス・タカラ・ブロッコリーの共同プロジェクトによるアニメ「熱風海陸ブシロード」にメカニックデザインで参加、注目を集めている。

株式会社デジターボWebサイト

2006/2/5 日曜日

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